馬鹿は昔から ページ20
ぺこり、と頭を下げる。桂さんはそれを見て「ほぉ」と呟いた。
「驚いた、暫く見ぬ内に随分と大人になったのだな。男子三日会わざれば刮目して見よ、などと言うが…女子もまた侮れんな」
桂さんは感心した様に言うと隣に佇むエリザベスさんに「な?」と。私は「全く成長出来てませんよ」と自嘲気味に笑った。
「そんな事は無い、今のA殿を見たら銀時も…あぁ、すまない」
口を滑らせた、とでも思ったのだろうか。桂さんは気不味そうに目を逸らして口を閉じた。私は「銀さんが何ですか?」と明るい声を意識して言う。桂さんは迷う様な素振りを見せ「良いのか?」と。
「良いも何もただの雑談じゃないですか。私は大丈夫ですよ」
「そうか…」
すまぬな、ともう一度謝ると桂さんは「今のA殿を見たら銀時もきっと喜ぶだろう」と少し嬉しそうに言った。
「喜ぶ…ですか」
「あぁ」
あまりピンと来ない話に私は小首を傾げる。桂さんは「こんなに綺麗な女性に育つなんて銀時も勿体無い事をしたな」とクスクス笑う。
「今頃どこかで嘆いているかも知れん、いい気味だ。皆に心配を掛けた罰だな」
「どこか…」
桂さんは楽しそうに笑うが、私は目を伏せて曖昧に笑うしか出来ない。どうにか話を続けようと「どこに居るんでしょうね、あの人は」と言った。不安な気持ちは少しも隠せた気がしない。
それを見て笑うのを止めた桂さんは暫く黙った後に「昔な…」と曇り空が広がる天を見上げて語り出した。
「一ヶ月ほど銀時が行方知れずになった事があった」
「え…!?」
「あの時も皆が心配して待ったな、特に高杉は苛立っていた」
攘夷戦争時代、銀さんは急に行方不明になったと桂さんは言った。どこを捜しても銀さんは見つからず、何人かは「死んだのではないか」と諦めていた。しかし、
「俺や高杉、坂本も…最後まで諦めなかった。あの馬鹿は殺しても死なない様な男だ、絶対にどこかで生きている…とな」
「それで…どうなったんですか?」
勿論のこと銀さんは生きているはずだ。そうでなければ私と銀さんは出会っていない。桂さんは「どうなったと思う?」と意味ありげな表情を浮かべた。
「分かりません」
正直に答えると桂さんは「何と…ただの迷子だったんだ!」と、その言葉と同時にお腹を抱えて大笑いをし始めた。
「『ちょっと用足そうとしたら誰も居なくなってんだもん。まじビビったわ』と性懲りなく言うんだ。本物の馬鹿だろう!」
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 総悟13さん» 毎度ありがとうございます!涙…と、取り敢えずハンカチをどうぞ!!助けたいのは山々だったのですが今回はここから大きく動くので…どうなるかドキドキして頂ければ嬉しいです( ´ ▽ ` ) (2017年3月4日 21時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
総悟13(プロフ) - 衝撃のラストに涙してしまいました......。こういう死の縁に立った主人公、ヒロインは助かるのが定番ですが助からないとは......本当に衝撃です。次も楽しみにしています!! (2017年3月4日 12時) (レス) id: 467c9905a7 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» そうなのですか…!励ましのお言葉、本当に嬉しいです。私も頑張ってこの子を皆さんに愛される子にしたいです、頑張りたいです。応援、本当にありがとうございます。最大の励みになりました!! (2017年2月22日 20時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
桃乃(プロフ) - お返事ありがとうございます。私も以前、活動させて戴いてたときにスランプになりましたよー!でも、お腹を痛めて生んだ子(作品)は自分が思っているよりも凄く良い出来になってる筈なので自信を持ってくださいねー!応援してますっ! (2017年2月22日 18時) (レス) id: 3b34613ca3 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» コメントありがとうございます!最近少しスランプ気味で思う様に書けていなかったのでそう言って頂けて本当に嬉しいです。これからも桃乃さんに楽しんで頂ける様に頑張ります。 (2017年2月22日 11時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月19日 18時