彼の残した二人の為 ページ17
***
手紙を持っていつもの道を歩く。どこを歩いてもこのかぶき町には銀さんの思い出が沢山あって苦しくなる。目を閉じるとあの時に戻れるのでは無いかとさえ錯覚する。
(どうしようもないなぁ…)
伝える事を怠った私への天罰なのだろうか。怖くても、フラれてしまっても、伝えてさえいればこんなに苦しい事は無かった。きっと諦めも付いたと思う。諦められないのは…まだ期待をしているからだ。
「A」
目を細め、柔らかな笑顔で、優しい声で、私の名前を呼ぶ。あんな優しい表情で私の事を見つめるものだから、私だって少しの期待をしていたのだ。もしかしたら…私の想いも通じるのかも知れないと。
でも、私は『明日』もあるから大丈夫だと思った。フラれて傷付く事を恐れて『今』から逃げた。あの日、銀さんがあの時を『最後』にしてしまうと気付かずに。
私はあまりにも盲目的だった。自分の事しか考えていなかった。銀さんを好きだと何だと言いながら、銀さんが何に悩んでいるのかなんて何一つ気付かなかった。悩んでいる事も知らなかった。
(そんな私を銀さんは…)
呆れて見捨ててしまったのかも知れない。私みたいに自分ばかりを省みる様な女、銀さんはきっと好きじゃない。だから…居なくなっちゃったのかな。
喉元に何かが張り付いた様な感覚、締め付けられる様にぎゅうと喉が痛くなる。気を張っていないといつ涙が出てくるか分からない。そう言えば神楽ちゃんは泣かなくなったなぁ…。
(ダメダメだ)
我慢、するんだ。
銀さんが帰って来るまで…バラバラになってしまった万事屋をもう一度一つに出来るまで。泣くのはそれからだって遅くはない。
私より歳下の二人が一生懸命頑張っている、銀さんの想いを継ごうとしている、銀さんを待っている。私が…その二人を支えずして銀さんにどんな顔を向ければ良いの。しっかりしないと。
顔を上げれば、ようやく墓場が見えて来た。私は毎日のようにここに訪れている。目的は勿論『手紙』だ。
銀さんのお墓の場所まではもう幾度となく足を運んでいるから迷う事はない。私は黙って真っ直ぐにそこへと向かう。すると、今日は先客がいた。彼女は銀さんのお墓の前で静かに手を合わせている。
「お登勢さん…」
その声に彼女は顔を上げると「おや、アンタかい」とシワの刻まれた顔を綻ばせ、私の姿をその目に収めた。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 総悟13さん» 毎度ありがとうございます!涙…と、取り敢えずハンカチをどうぞ!!助けたいのは山々だったのですが今回はここから大きく動くので…どうなるかドキドキして頂ければ嬉しいです( ´ ▽ ` ) (2017年3月4日 21時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
総悟13(プロフ) - 衝撃のラストに涙してしまいました......。こういう死の縁に立った主人公、ヒロインは助かるのが定番ですが助からないとは......本当に衝撃です。次も楽しみにしています!! (2017年3月4日 12時) (レス) id: 467c9905a7 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» そうなのですか…!励ましのお言葉、本当に嬉しいです。私も頑張ってこの子を皆さんに愛される子にしたいです、頑張りたいです。応援、本当にありがとうございます。最大の励みになりました!! (2017年2月22日 20時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
桃乃(プロフ) - お返事ありがとうございます。私も以前、活動させて戴いてたときにスランプになりましたよー!でも、お腹を痛めて生んだ子(作品)は自分が思っているよりも凄く良い出来になってる筈なので自信を持ってくださいねー!応援してますっ! (2017年2月22日 18時) (レス) id: 3b34613ca3 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» コメントありがとうございます!最近少しスランプ気味で思う様に書けていなかったのでそう言って頂けて本当に嬉しいです。これからも桃乃さんに楽しんで頂ける様に頑張ります。 (2017年2月22日 11時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月19日 18時