夢の中、幸せな日々 ページ12
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「銀さん、今日から新メニューみたいですよ」
冬の初め頃、もうすぐクリスマスが迫っていたある日の事。銀さんと私はいつもの甘味処を後にして帰路に着いていた。
その道中でたまたま見つけた新しいケーキショップ、店の前には『期間限定 冬の新メニュー』と書かれたボードが置かれていた。
『期間限定』という言葉にそそられる物がある、隣では銀さんも興味深げにボードを覗き込んでいた。
「女っつーのは期間だとか季節だとかに弱ェな」
「それは日本の四季の豊かさにもありますよ。銀さんだって春は春っぽいスイーツを食べたくなるでしょう?」
「まぁ、違いねェ」
銀さんは呟くと「冬と言えば何だ?」と小首を傾げた。私は「そうですねぇ…」と暫く考えてみる。
冬と言えばクリスマス、クリスマスと言えばケーキ類。豪華な装飾を施したデコレーションケーキ、見た目も楽しいブッシュ・ド・ノエル、あとはケーキでは無いけれどヘクセンハウスもクリスマスっぽい。
「そう思うと冬はお菓子の季節かも知れませんね」
「寒ィから保存もし易いしな」
「確かにそういう利点もありますね」
と、私達は再びボードに目を向ける。さっきいつものお店でお菓子は食べたばかりだけれど…やはり食べたい。季節限定に弱いのは仕方の無い事なのだ。
「…行きませんか?」
「俺も今そう言おうと思ってたとこだ」
「私達甘党同士ですからね」
結局、私達はお店の営業戦略に負けてお店の中へと足を踏み入れる事にした。銀さんは「ほら、行くぞ」と何を頼もうか頭を悩ませ始める私に左手を差し出す。
「…。」
私は…ぼんやりとその手を見つめた。何でだろう…何ですぐに握り返そうと思えないんだろう。どうしてか私の右手は動かせない。
そもそも、銀さんはいつもどんな風に笑っていたっけ。銀さんの顔を見上げれば笑っているのに…私は、こんな風だっけと思ってしまう。
何か…何かが違うのだ。
確かに違うのに、どこなのかは分からない。でも今目の前で笑うこの人は銀さんじゃない。絶対に違う。
けれど、私は差し出された左手に縋り付く様に自分の右手を重ねた。違っても良い、だってこれは夢なのだから。違うのは当たり前なのだ。
夢の中の私は笑う、銀さんじゃない銀さんを見て…彼を銀さんだと思って微笑みかける。いつも通りの日々を噛みしめる。
それを幸せだと気付くのに、私は遅過ぎた。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 総悟13さん» 毎度ありがとうございます!涙…と、取り敢えずハンカチをどうぞ!!助けたいのは山々だったのですが今回はここから大きく動くので…どうなるかドキドキして頂ければ嬉しいです( ´ ▽ ` ) (2017年3月4日 21時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
総悟13(プロフ) - 衝撃のラストに涙してしまいました......。こういう死の縁に立った主人公、ヒロインは助かるのが定番ですが助からないとは......本当に衝撃です。次も楽しみにしています!! (2017年3月4日 12時) (レス) id: 467c9905a7 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» そうなのですか…!励ましのお言葉、本当に嬉しいです。私も頑張ってこの子を皆さんに愛される子にしたいです、頑張りたいです。応援、本当にありがとうございます。最大の励みになりました!! (2017年2月22日 20時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
桃乃(プロフ) - お返事ありがとうございます。私も以前、活動させて戴いてたときにスランプになりましたよー!でも、お腹を痛めて生んだ子(作品)は自分が思っているよりも凄く良い出来になってる筈なので自信を持ってくださいねー!応援してますっ! (2017年2月22日 18時) (レス) id: 3b34613ca3 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» コメントありがとうございます!最近少しスランプ気味で思う様に書けていなかったのでそう言って頂けて本当に嬉しいです。これからも桃乃さんに楽しんで頂ける様に頑張ります。 (2017年2月22日 11時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月19日 18時