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命の次に大事な物 ページ9

知りたい気持ちはあるけれど…本人が言いたくない事を無理に聞く事は出来ない。


「だから私からはもう何も聞きません、詮索もしないです。誰にだって言いたくない事の一つや二つありますから」
「…。」
「その代わり、」


私はそこで言葉を切ると鞄の中に入っていた手紙を銀さんにグイッと押し付けた。それは先程彼が欲しいと言ったあれである。


「これは…私にとっては命の次ぐらいに大切な物です。他人から見ればゴミかもしれないし、何でもない物ですが…私にとっては大事な物です」


これを他人に預けるだなんて思いもしなかった。ずっと私だけが持ち続ける荷物なのだと思っていた。これを…欲してくれる人などいないと思っていた。


「中身は何でもない事ばかり書いてあります。季節の変化とか今日あった事とか…小さな事しか書いてありません。でも、」
「大事、なんだと」
「はい」


私にとっては物心付いた時からの付き合いでもある。最早私の半身と言ってもいい程、これは私が生きてきた証みたいな物だから。

だから、


「これを依頼料に…私の事を知って下さい」


こんな横暴な願いを賭けても良いと思う。銀さんは「は?」と言っているが先にこれを欲しいと言ったのはこの人だ、今更撤回なんて絶対にさせない。私だってずっと待っていたのだから。


「万事屋さん」
「いや、お前…」
「私からの依頼です。私が貴方の事を詮索しない代わりに私の事を知って下さい、背負って下さい」


我儘ばかりのこの依頼。
私にとっても賭けである。本当に…これが上手くいくのかなんて知らない。もしかしたら遠回りをしてしまっているかもしれない。だけど、今の私には彼に出来る事なんて何も無いと思うから。


「そして沢山の物を背負って、それを支えきれなくなったら…話して下さい。私は貴方の話なら何だって聞きたいですから」


もし本当にそんな時がきたら…その時こそ私はちゃんと彼を知りたい、自分自身を嫌う彼を受け止めたい。私が今この町でしたい事、しなくちゃいけない事、それは彼の側にいる事だ。

きっと、何かを見つけられる気がする。

銀さんは暫く私の顔を呆気にとられたように見つめ、やがて「馬鹿じゃねーの」と呟いた。


「こちとらお前の命の次に大事なモン背負わされたって米の一つも買えやしねーよ」
「そんな無駄な物を欲した罰です、ちゃんと責任は取って下さい」
「俺、責任取るような事したっけねェ」


銀さんは呆れ笑いを浮かべると私の体を引き寄せた。

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設定タグ:銀魂 , 坂田銀時   
作品ジャンル:恋愛
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lying doll(プロフ) - 佳菜子さん» お久しぶりです(`°ω°´)そんなそんな!勿体無いお褒めのお言葉光栄な限りです!これからもちょくちょく頑張っていくのでよろしくお願い申し上げます( ´ ▽ ` )ノ (2017年1月8日 14時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
佳菜子 - doIIさんお久しぶりです!続編おめでとうございます(*´∀`*) 文章などがとても綺麗で思わずこの物語に引き込まれてしまいます(*^^*) これからも無理しない程度に頑張ってください! (2017年1月8日 11時) (レス) id: 9f42f2c5eb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile  
作成日時:2017年1月4日 13時

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