手の温もり ページ45
「銀さんの手って…温かいですよね」
歩き出して程なくした頃、不意に私はそう呟いていた。本当に特に何の意識もなく口を突いて出た言葉、銀さんは「げほげほっ」と何やらむせている。
「唐突だなオイ」
「いえ、何だかそう思ってしまって…温かいです」
「あー…何もう今日のお前。いつもと違い過ぎんだろ、キャラ変して俺を殺しにかかってんのか」
「いや別にそんなつもりないですけど…」
"いつもと違う"
前に私が銀さんに言った事のある言葉だ。あれが原因で微妙に喧嘩腰になってしまったのだっけ…自分が言われて嫌なくせに私に言うのか。
相手の事をよく知りもせず、そういう言葉を掛けるのは間違いだ。そんなような議論だった。その原理でいくと…銀さんは、あの頃より近くに私を見てくれているということか、自惚れそうである。
「手な、手と言やぁ…よく言うよな。手の冷たい人ほど心が温けェって。なに、その類の事が言いてーのか、まさか」
「そ、そんなつもりないですよ…！！」
ギロリと本格的にお怒りモードの銀さんが睨み付ける。手が冷たい人ほど心が温かいと言うのなら、その逆は手の温かい銀さんは心が冷たくなってしまう。そんな事あるはずがない。
「銀さんは…銀さんは手が温かいから、心の温かさが手にも出てるだけです！！銀さんが冷たいだなんて、ある訳ないじゃないですか！馬鹿言わないで下さいもう！！！」
まくし立てるような私の言葉に銀さんは「お前ね、」と目を細めて、僅かに握られた手にも力が強まった気がした。
「そういう殺し文句どこで覚えてくるんだか」
「殺そうとだなんてしてません！！私は本当の事を言ってるだけですから！」
「ハイハイ、分かった分かった」
銀さんは「もう今日のお前相手に勝てる気しねーわ」と苦笑して私の手を引くように歩き出した。
"いつもと違う"
その心当たりは十分過る程に自分の中ではあるのだ。私はやはり無意識、いや意識の奥底の方で今日がもしかすると"最後"かも知れないと思っているから。
もし"最後"になってしまうなら…沢山の思い出が欲しかった。それは遺される方の身になれば辛い事なんて分かっているのに、全部エゴでしかないのに。
一番好きな人、銀さんとの思い出が欲しかった。死ぬ間際に『良い人生だったなぁ』と笑えるような思い出が。実際、もう十分貰ったような気もするけど。
だけど、貪欲に。
忘れて欲しいと思う反面、忘れて欲しくないと思う身勝手さが…私の心に確かにあった。
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lying doll(プロフ) - 佳菜子さん» お久しぶりです(｀°ω°´)そんなそんな！勿体無いお褒めのお言葉光栄な限りです！これからもちょくちょく頑張っていくのでよろしくお願い申し上げます( ´ ▽ ` )ﾉ (2017年1月8日 14時) (
レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
佳菜子 - doIIさんお久しぶりです！続編おめでとうございます(*´∀｀*) 文章などがとても綺麗で思わずこの物語に引き込まれてしまいます(*^^*) これからも無理しない程度に頑張ってください！ (2017年1月8日 11時) (レス) id: 9f42f2c5eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ：http://twitter.com/hearty__smile
作成日時：2017年1月4日 13時
