熱情 ページ31
「銀さん」
「…。」
座り込む銀さんから返事はない。ただムスッとしていて前をじっと見ていて、私とは目を合わせてはくれない。私は向かい合って同じように屈む。
「銀さん」
「…んだよ」
やっと…目が合った。
嬉しい、と思ってしまう。こんな些細な事が、とてつもなく嬉しくて…それだけで心がいっぱいになる。絡まり合う銀さんの瞳に吸い込まれそうだ。
「どうして怒ってるんですか」
「怒ってねーよ」
「怒ってます」
きっぱりそう言えば銀さんはフイッと目を逸らしてしまった。だから私は私を捕らえる瞳を逃さぬように銀さんの肩をぐっと掴んで此方を向かせる。
「なっ…」
当然だけど銀さんは目を丸くして驚いている。私の髪が掛かりそうな程に近い距離に私達はいた。
「ちゃんと、目を見て言って下さい」
「…怒ってねーし」
「嘘言わないで下さい」
何で怒っているのかは知らないけれど明らかに銀さんは怒っている。私が何かしてしまったのなら嫌だし、そうじゃなくとも銀さんの事なら何でも知りたいと思ってしまう。
やがて銀さんは大きな大きなため息を吐いて「何なのお前」と呆れたようにこぼした。私は反論したかったのだけれど…それよりも前に銀さんが口を開く。
「急に俺の前に現れて…俺の心にずっと居て。何なの本当にさ…そのくせ危機管理能力皆無で目ェ離せねーよ。ったく…俺はどうしたら良いんだよマジで」
「…銀さん?」
矢継ぎ早に放たれる言葉を理解するよりも前に銀さんは私の手を取る。握られた部分が熱くて、いつもは死んでいる目には真剣味が感じられて。顔を覗き込まれた瞬間、心臓が止まりそうになる。
「A」
「…な、んです」
コツン、と額と額がぶつかる。心臓が壊れそうだ。銀さんの前髪が私の目にかかってくすぐったい。伏し目がちで…表情は分からないけど、私の名を呼ぶ声はひどく優しい。
「頼むから…あんま心配させんな。自分でもよく分かんねーけど…嫌なんだよ。お前が他の男と一緒に居るの、スゲー嫌だ」
「…。」
何を、言えば良いのか。正解なのか。ちっとも分からない。銀さんの考えてる事は…難し過ぎる。銀さんは何を思ってこんな事を言っているのか。
ただ、目の前にある熱がひどく私の心を乱す事だけは確かだった。
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lying doll(プロフ) - 佳菜子さん» お久しぶりです(`°ω°´)そんなそんな!勿体無いお褒めのお言葉光栄な限りです!これからもちょくちょく頑張っていくのでよろしくお願い申し上げます( ´ ▽ ` )ノ (2017年1月8日 14時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
佳菜子 - doIIさんお久しぶりです!続編おめでとうございます(*´∀`*) 文章などがとても綺麗で思わずこの物語に引き込まれてしまいます(*^^*) これからも無理しない程度に頑張ってください! (2017年1月8日 11時) (レス) id: 9f42f2c5eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年1月4日 13時