救世主 ページ13
「あの、」
育ち盛りの少年少女に貧困生活はあまりにも可哀想に思え、私はそろりと手を挙げた。たった一つだけなら提案が出来る。銀さんと神楽ちゃんの目線が私へと集中した。
「私、実家が農家なんですが…」
「「マジでか!!」」
0.1秒。
もの凄く食い付きが良かった。これはもう本当に相当由々しき事態に追い込まれていたのだと察する。私は「もし良かったらですが…」と前置きをして。
「「是非とも喜んで!」」
「いや、まだ何も言ってないですよ!」
綺麗に揃う二人の声に圧倒されつつ私は一歩後退る。もしかすると…しない方が良い提案だったか。けれども二人はやっと見つけた食いぶちを逃すつもりもないらしく…じりじりと私に迫っていた。
「くれるんだろ?」
「勿論くれるアルな?」
「あ、あげますけど…」
怖いです。
食べ物を目の前にしたライオンとはこういう事を言うのか、ライオンを目の前にしたネズミはこういう気持ちなのか。理解したくなかった気持ちを理解した。
「米とかアルか!?」
「お米もありますし…お野菜もありますよ」
「お前女神アルな!救世主ネ!!」
「ありがとうございます…?」
神楽ちゃんは早速この話を新八くんに知らせようと大急ぎで居間へと走って行った。取り残された私は銀さんの目をチラリと見る。
「マジで助かった。サンキュな」
「いえ…大量に屯所に届くので消費にも困っていたところで。寧ろ有難いです」
ここまで喜ばれたら…そりゃあ私だって嬉しいに決まっている。神楽ちゃんの弾けんばかりの笑顔は…何だか私を元気にしてくれる気がした。
「それより…皆さんどういったご関係なんですか?一緒に住んでいるみたいですが」
そこで、私はようやく疑問に思っていた事を口にする事が叶った。詮索はしないと誓ったが、ここまできたらこれぐらいは許されるはずである。
「あぁ、一緒に暮らしてんのは神楽だけだけどな。アイツら従業員」
「万事屋のですか?」
「そ。アイツらも金さえ貰えりゃ大抵の事はやってくれるぞ」
「そうだったんですか」
見たところ神楽ちゃんは私より年下で、新八くんの方は私と同じぐらいか。何にせよ二人とも自ら働いてお金を稼いでいるとは…何とも大人だなぁと思うのだった。
そんな感心を一人していればドタドタと居間の方から二人分の足音が聞こえてきた。
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lying doll(プロフ) - 佳菜子さん» お久しぶりです(`°ω°´)そんなそんな!勿体無いお褒めのお言葉光栄な限りです!これからもちょくちょく頑張っていくのでよろしくお願い申し上げます( ´ ▽ ` )ノ (2017年1月8日 14時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
佳菜子 - doIIさんお久しぶりです!続編おめでとうございます(*´∀`*) 文章などがとても綺麗で思わずこの物語に引き込まれてしまいます(*^^*) これからも無理しない程度に頑張ってください! (2017年1月8日 11時) (レス) id: 9f42f2c5eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年1月4日 13時