あの日手放したものをもう一度【ブルーロック】 (ページ10)

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蜂楽によるお願い攻撃に根を上げたのはAの方だった。

＂ちゃんと休息をとる＂事を条件に、コートの隅で体育座りを決め込んだAはまるで小動物のようだ。

「(なんだかんだ俺らの事心配してくれてんだよな……)」

そう潔は思いながら、軽い準備運動を済ませる。

蜂楽の方も準備OKだそうだ。

．

そんな2人の1on1を、Aは黙ったまま見ていた。

最初に何か話してたようだが、Aのところまでは聞こえない。

そして始まった2人の攻防。

だが圧倒的に蜂楽の方が上手い。

自由自在にドリブルをする蜂楽から、潔は一向にボールを奪えてない。

でも蜂楽が何かを言った後、明らかに潔の雰囲気が変わった。

『(……あの目だ)』

それは間違いなく、鬼ごっこの時に見せた表情だ。

その目を見ると、胸の奥が疼く。

きっと何かをしてくれるんじゃないかと、期待してしまう。

「にゃは♪そうそう！あの時もそんな眼してたぁ！」

対する蜂楽も、そんな潔を見て嬉しそうに声を上げた。

『(楽しそう………)』

蜂楽のドリブルはいかにも楽しそうで、サッカーが好きなんだという気持ちが伝わってくる。

でも、なんだか

『……寂しそう』

「へっ？」

「えっ？」

気が付けば声に出てた。

しまった、と思った時にはすでに遅し。

ポカンと固まる潔と、まん丸く目を見開いた蜂楽がこちらを見ていた。

『耳良すぎか』

ピンポンパンポーン♪

二つの視線に耐えきれなくなってきた丁度その時、

天井のスピーカーからそんな音がした。

三日間の体力テストの集計が終わった為、速やかに部屋に戻り最新ランキングを確認せよ、との事。

それに安心し、片付けは自分がするから早く部屋に戻るよう二人を促す。

汗をかいてるからタオルでも取りに行っておけば良かったな、なんて考えていると

お礼を言いながらパタパタと出て行く二人。

「あ、そうだった」

先を行く潔を追いかけるように出ていったはずの蜂楽が、ひょこっと顔を覗かせる。

「そっちのがいいじゃん、A♪」

それはきっと眼鏡を外した姿のこと。

立ち去り際に、ぺろ、と舌を出して笑った。