あの日手放したものをもう一度【ブルーロック】 (ページ44)

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残り時間はあと15分。

ボールを追う千切と斬鉄の前に立ちはだかったのは凪。

読まれていた……そう理解した瞬間

「甘いぞ、天才」

凪よりも少し手前

そこに、潔が走り込んでいた。

「奪うならこの位置だ！！」

「いくぞ千切！！」と言ってもう一度パスを出す潔。

潔には分かっていたのだ、千切の弱点となる空間が。

だからこそそこに正確に走り込んだ。

「いけ……」

「いい子だ潔、あとでよしよししてやる」

走り続ける千切の足は止まらない。

そのスピードにはもはや誰も追い付けなかった。

だが、間一髪そのゴールは弾かれる。

それでも潔の目はまだ終わっていない。

そんな潔の様子を、考えるようにしてじっとAは見つめる。

全て分かっているような、その顔を。

跳ね返ったボールの先にいたのは我牙丸。

更にそのシュートを玲王が防ぐ。

「これでも決まんねぇのかよ！！」

立て続けにブロックされた事で動揺が走る。

だがそのボールの先にいたのは_______

「攻め潰すぜ」

そこはもう、國神のテリトリーだ。

＂予感(よみ)通り＂

「ウルァ！！」

１点を返し、拳を握った國神に全員が駆け寄る中、1人潔はその光景を遠くから見ていた。

その目に宿ったものを、Aは見逃さない。

『そろそろ、来る……』

潔世一……彼の覚醒が近い。

スコアは4-4で残り時間は5分。

一人一人がフィールド上で自分の能力を最大に体現する事で
中盤を制して怒涛の攻撃を繰り出すチームZ

そして、凪誠士郎の覚醒により予測不能の攻撃を魅せるチームV

_________面白い。

最高に面白い。

こんなに熱い展開を、誰が予想できただろうか。

『ほんと、面白いよね……サッカーって』

無意識にAは自分の左足に触れる。

駆け抜けていたあの頃の高揚は、今も鮮明に覚えてる。

『……走りたい』

ボールを追いかけて、どこまでも。

それ程までに、目の前で繰り広げられている試合はAを刺激する。

だがそれはA1人だけでは無かった。