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柳に警告されてから、しばらくの間は仁王も丸井もAに警戒心を抱いていた。
しかし、Aの方はと言えば大して気にする様子もなく、毎日友達に囲まれて軽快に話し、笑うだけ。
テニス部に来るのかとも思っていたが、そんな素振りは見られなかった。
諦めたのか。ついに、そう二人が思い出した頃だっただろうか。
｢ブンちゃん、部活行くぜよ。｣
｢あ、わっり。先行ってて！｣
丸井は手早く机の上のものを片付けながら、仁王にそう言った。
HRの終わったばかりの教室は、まだ賑わいを続けている。丸井はざわめく教室になんとなく耳を傾けながら、机の上の整理をしていた。
｢……へー、Aって大食いなの！？そうには見えねーんだけど！｣
ふと、クラスメイトの誰かから飛び出たAの名前。丸井の耳が、自然とそちらへ向く。
｢よく言われるんだけどさー、そうなんだよねー。母さんがしょっちゅう食べさせてたからかな。気づいたら、他の人よりすげー食べるようになっちまって！｣
｢えーでも雲井くん、痩せてるじゃん！痩せの大食いなの？いーなー！｣
｢うーん多分そうかな？変だよなー、普通だったら僕、豚みたいになってそうなのに！｣
｢動いてるからだろお前。だって元テニス部なんだろ？なーなんでうちのテニス部はいんねーんだよ。お前くらいだったらレギュラー陣に負けねえくらい人気出ると思うぜ。｣
｢それがさ、部長さんにダメって言われちゃって。｣
｢あー幸村か……幸村に言われたら厳しいわな……｣
｢まーでも、こんだけ食べてて痩せてるっていいよね！大食いのイケメンなら、僕自信あるから！｣
｢ちょ、自分でイケメンとか言うなよ！事実だけどさ！｣
(……は？)
イケメンはともかく、大食いで負けないだって？
気づけば、丸井の足はAの元へと向かっていた。
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作者名：幻想曲 | 作者ホームページ：http://uranai.amanoboru
作成日時：2015年9月10日 3時
