儚く、揺らめく ページ16
【土方side】
「……ふぅ、」
まとわりつく考えを振り払う様に、紫煙を吐き出した。
夜の帳に身を包む庭を向き、ぐずぐずとした気分をどうにか振り払おうと懸念する。
時計の針は既に十二を指しており、今日の様に仕事が早く済んだ日は、きっと、もう寝ているであろう時間。
けれども、どうにも眠れねェ。
……原因はとっくに分かっている。
……脳裏に焼け付いて消えないAの顔。
「……チッ」
思わず舌打ちを漏らす。
(女に調子を狂わされるなんざ……らしくねェ)
それも、Aに、だ。………有り得ねェ。
だが、それに反し記憶として新しい、Aの、虚空を見る様な、色がまるでなかった表情。
あの表情を見て、どうにも放って置けなかった。
普段の彼奴からは、想像も出来ない、儚げで放っておけば、消えてしまいそうなそんな雰囲気を漂わせていたA。
「……はぁ、クソッ」
無意識の内に、もう居ないアイツと重ねてしまい、前髪を掻きむしる。
要するに、Aにも何かしら事情を背負って此処に居る、ということだろう。
別にそれを聞き出す、という考えは全く無いものの、どうにもあの表情が焼き付いて離れない。
それに、付け加える様に思い出す――――意図せずAに触れた記憶。
「……はぁ。何やってんだ、俺ァ」
…取り合えず、別に変なことした訳ではあるめェし、いつも通りでいいだろ。
言い聞かせる様に呟くと、ふぅー、と少し長めの紫煙を吐いた。
長く揺らめく紫煙は、しとしとと降り始めた雨に掻き消された。
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暇愛*(プロフ) - 狗冰さん» ごめんなさい、レス押すのを忘れてました…… (2019年7月15日 13時) (レス) id: 6dbb02dd11 (このIDを非表示/違反報告)
暇愛*(プロフ) - ありがとうございます!稚拙な作品ですが、よろしくお願いします! (2019年7月14日 20時) (レス) id: 6dbb02dd11 (このIDを非表示/違反報告)
狗冰(プロフ) - 面白そうです!更新ファイト! (2019年7月14日 19時) (レス) id: aa5a4ed97b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暇愛* | 作者ホームページ:
作成日時:2018年6月11日 2時