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気になるあの子は高校生/lntn ページ35

 その子は高校生だった。無愛想な表情で、道を歩く彼。特段人と違うわけでもないのに、その子に目を奪われてしまった。イヤホンをつけたまま登下校している彼に、いつからか興味ばかりが向けられていた。名前も知らないのに興味があるなんて、ちょっと変だなと思いながら。とはいえ、私はしがないただのOLなので、毎日すれ違う彼をただ眺めることしかできなかった。

 ある日の深夜だった。良くないと分かっていても甘いものが食べたくてコンビニに行った、その帰り道。暗い住宅街をフラフラと歩く一人の高校生がいて。

「……ねえ」

 声を掛けずにはいられなかった。傍から見たら不審者だろう。ゆっくりと振り向いた彼は、相も変わらず無愛想で。

「……なに、お姉さん」
「い、や……こんな時間に出歩いたら危ないよ」
「それはお姉さんもじゃないの」

 た、確かに。高校生に言いくるめられてしまった。制服はどこの子だろう。ここら辺の高校ってなんだっけ。

「高校生が、出歩く時間じゃないよ。少なくとも」
「だって帰っても誰もいないし」

 子供じみた言い訳。いや子供なんだけど。早く帰った方がいいと促しても、彼は首を振るだけだった。親が家にいないのか。

「名前、なんて言うの」
「……蘭たん、って呼ばれてる」
「じゃあ、蘭たんくん、えーっと、そうだな……」

 なんて情けない大人なんだろう。男の子一人どうにもしてあげられないなんて。足りない頭で考えても、上手く思考が纏まらない。

「じゃあさ、お姉さんち連れてってよ」
「え? ……う、うん、うん、いいよ」

 私が了承すると、彼はやった、と小さく呟いて笑った。笑うと年相応だ。了承したのはいいが、高校生とはいえ、家に男の子を招くのはどうなんだろう。まあ高校生だし、と納得してしまった。

「手なんて出さないよ」
「そこは心配してないんだけど……」
「酷い、俺だって男の子だよ」

 蘭たんくんは私の前を歩いて、振り返った。

「今日は目が合ったね、お姉さん」

 子供のような表情はどこにもなかった。

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作者名:ぷりん | 作成日時:2020年11月11日 13時

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