虎の娘《５》 (ページ24)

今日:19 hit、昨日:5 hit、合計:39,432 hit

. ページ24

・

分かりやすく機嫌が態度に出て思ったことを言ってみんなに気を遣わせて、ってラブの時は圧倒的な最年少だったから当たり前のようにそうしていたけど後からあの時の自分を見ると本当に腹が立つ。嫌い。

そんな自分が嫌だったから変わろうとしたのに謙ちゃんに会ってしまうとラブの時の私で話してしまう。

もう成人したのに、あのときの私じゃないはずなのに未だに気を遣わせてしまうことが申し訳なくて差し出してくれた差し入れは自分の分だけ取って謙ちゃんに返す。

安井「…あれ、チョコ嫌いになっちゃった？」

A 「これは謙ちゃんの分の差し入れでしょ」

安井「Aちゃんそんなこと言う子だっけ？…まあいっか！ありがと！」

謙ちゃんは素直に受け取ってくれたけどそれはそれで気を遣わせた気がして無意識に俯いてしまう。

久々すぎるからなのかな、謙ちゃんとどの距離感で居れば良いのか分からない。

安井「あ、Aちゃん一応今日の台本確認しといた方が良いなって思ったとこ付箋貼ったんだけど収録まで時間あるから見ててもらって良い？」

A 「…こんなことまでさせちゃってごめん」

安井「え、全然！俺がしたかったからやっただけだよ謝らないで(笑)」

笑いながら渡された台本を見ると信じられないぐらい大量の書き込みと共に大事な部分には線が引かれていて、私が「真面目」だと褒められる仕事の事前準備は謙ちゃんから学んだことだったんだと思い出す。

そうだ、ラブを抜けてから謙ちゃんの支えが無くなって不安で謙ちゃんがしてくれていたことを全てするようになってこうなったんだった。

色々と世話を焼いてくれるのは気を遣ってなんかじゃない、元々の謙ちゃんの人の良さなんだ。

そう思うと申し訳ない気持ちは無くなって純粋に有難く台本を読み進めることが出来た。

A 「私がトラジャとしてやっていけてるの謙ちゃんのおかげかも」

謙ちゃんの教えがあったからレッスンの度に復習をするようになったし、自主練も始めた。

ラブに居た頃の全て人に頼って勉強さえ出来れば良いと思っていた私だったら多分今もみんなと距離が縮まっていなかった。

だから私は精一杯の感謝を込めて目を見てお礼を言った。