虎の娘《３》 (ページ28)

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練習ページ28

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今日は一日舞台に向けて講師の先生に来て頂いての稽古だった。

昨年までは未成年で女なのもあって必要最低限以外は参加していなかったけど今年からは全ての演目に参加する。

もちろんみんなに比べると全然…というか何なら全く出来なかった。

一日の練習で正直体力は限界だったけど、それ以上に悔しさの方が強くてみんなが楽屋に戻っても「帰る」と言いに来てもひたすら練習し続けた。

中村「A帰ろうよ、もう21時だよ」

一旦水分補給をしていると私の分の荷物も持ったうみが迎えに来てくれる。

うみの家は反対方向だから駅までしか一緒には帰れないけど、それでも毎日待ってくれている。

A 「ごめん、先帰ってていいよ」

中村「今日クレープ屋さん新作出るんだって言ったじゃん、早くしてくれないと閉まっちゃうよ」

A 「だから先帰っていいって…」

私の声は聞こえているはずなのに完璧に無視して近くの椅子に座っている。

早くうみのところに行った方がいいのは分かっているけど、今日したことが出来ないまま終わるのが嫌で練習に戻った。

中村「怖がってるからダメなんだって。絶対下のやつ無くならないから信用して落ちた方がいい。ビビってる方が危ない」

椅子に座ったまま遠くからうみがそうアドバイスをくれる。

それを意識してみると少し上手くいった気がした。

中村「A自分が思ってる以上にちゃんと出来てるから堂々と自信持った方がいいよ、勘違いでも自分が一番上手いって思ってた方がいい」

はっきりとそう言ってくれるうみを見ていると加入当初の唯一認めてくれて練習に付き合ってくれる頼れる先輩だったうみを思い出す。

A 「…ありがと」

中村「はい、じゃあ10秒以内に片付けて帰る準備して」

とりあえず自分の中でのノルマは達成したから帰ろうと思ってうみの近くに行こうとすると突然そんなことを言い出す。

出来る限りのハイスピードで広げていた荷物をまとめて電気を消しに行こうとするけど、うみは10秒数え終わるとさっさとスタジオを出ていった。