虎の娘《２》 (ページ39)

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Matsuda side

Aちゃんがある部屋の前で急に立ち止まってここがその部屋なんだと分かった。

耳を澄ますと海人らしき人の声が聞こえた。

「入る？」と口パクでちゃかに確認をして頷いたのを見て勢いよくドアを開ける。

中に居たのは広い机の端っこに向かいあわせで座っている海人とスタッフさん。

松田「ちょっとすみません、海人に確認したいことがありまして」

男「後ほどにして頂いてもよろしいですか」

案の定俺たちのことを分かりやすく拒んでくる。

ここで諦めたらさっさと海人の反省期間設けて俺たちとの接触も避けさせて、でAちゃんとのことも自然消滅させるんでしょ。

どうせAちゃんとのことも分かってるんでしょ。

だからふたりを呼んだんでしょ。

付き合ってるって分かっててAちゃんの唯一の味方だったことも分かってて、わざと別の人とのツーショなんか見せて絶望させて泣かせて何が楽しいの？

スタッフさんとふたりで話していた時の海人の雰囲気からしてこれはシロだと確信した。

その分大切なメンバーをふたりも意味も無く傷付けられたことに無性に腹が立って思わず睨んでしまう。

宮近「海人と話したいんで待っててもらっても良いですか」

ちゃかも海人を見て気付いたのかあからさまにスタッフさんのことを睨んでいる。

Aちゃんだけは後ろで控えめに立っているけど、俺らからの圧に負けたのかスタッフさんが素直に下がってくれる。

そして迷いなく海人のところに向かう。

松田「…言いたいことはいっぱいあるんだけど、とりあえずAちゃんのこと大切にしてって言ったよね？俺奪うよ？」

これを言えば海人は俺への敵対心でその分Aちゃんのことを大事にしてくれる。

何回かもつれて喧嘩になってしまったこともあるけど、その分Aちゃんのことを想っていると知れたから後悔はない。

今海人が俺のことを睨んでいる目もいつもと変わらない「お前なんかに負けない」という目だった。

それが知れたら良いんだよ、それをちゃんとAちゃんとこのスタッフさんに言いなよ。

海人の想いは知れたから今度はスタッフさんに向かい合う。