虎の娘《２》 (ページ22)

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何も分からないのに元太はどこか満足そうだった。

松田「不慣れなのも素直なのも気にしいなのも全部可愛い。海人はちゃんと全部受け止めてくれると思うよ、Aちゃんまだ若いし一人ぐらいノリでも良いんじゃない？」

その言葉でようやく元太が昨日のことについて話してるんだと分かった。

でも私宮近にしか相談してないし誰にも言わないでって言ったはずなんだけど…。

海人が言ったのかな、なんて思っていると私たちの撮影の番になった。

松田「ごめんね、最後の最後まで諦め悪くて。」

撮影が始まる直前小声で言われたその言葉だけはどれだけ考えても分からなかった。

そして撮影が終わって楽屋に戻るといつもと同じ私の隣の席にうみが座っていた。

宮近「あ、ふたりも終わった？おかえり〜」

松田「あれ、如恵留と閑也も終わってなかった？」

宮近「なんか時間あるから外行くって」

松田「あ～、ちゃか一緒に行く？」

宮近「お前鬼？(笑)」

いつもならこんなくだらない会話も聞き流してまっすぐうみの隣に行って軽く小競り合いをする。

でも、いつも通りで居た方がいいのか気にした方がいいのかすら分かっていない私は何も考えないで隣に行くなんて出来なかった。

中村「…ほんとごめんね気遣わせちゃって。俺楽屋出よっか？」

何も出来ないままドアの前で立っていると察したうみが立ち上がろうとする。

A 「違う、まって。言ったじゃん、私がうみのこと嫌いになるわけないって」

中村「でもいつもみたいに来れない原因って俺でしょ？」

少しだけ怒ったような口調でそう言ってくるうみ。

それはそう。でもうみは何も悪くない。

さっきからずっとうみが気を遣う必要なんてひとつもない。

宮近「もう喧嘩しないでよ。Aこっち来る？」

荷物をまとめ始めたうみを見ていると宮近がそう声をかけてくれる。

ここで行ったら本当にうみのことを避けてるみたいになってしまうと思って敢えて何も変わらないフリをしていつも通りうみの隣に座った。

A 「…うみ座って」

今日散々避けて振り回してきたくせにさらっとそう言う私に不機嫌そうな顔をしながらも大人しく座ってくれた。