続・あんスタちゃんのプライベート【短編集】

瀬名泉〜かっこよく〜 ページ1

「なんで突然誘ったんですか？」

やっとの思いで誘って勝ち取ったこいつの隣を歩く帰り道。
やっぱり、ずっとアレを言わないまま卒業するのは嫌だから、落ち着いてる時に言っておきたい。
そして、あわよくば、一緒にいたい。

「………言いたいことあって」
「へぇ？何ですかそれ。なんかマンガでよくある告白シーンの直前のやつみたいですねぇ」
「……っ」

分かりやすすぎるくらいに、心が揺れた。
エスパーか。

「…あれ？図星ですか？」
「あんたね……」

ニヤニヤしながら聞いてくる。
確信犯なのか、冗談なのか。
ゆっくり顔が紅潮していく。

「そんなの聞かなくていーの」
「あはは」

今ので調子狂った。
もうなんて切り出せばいいのか分からない。

「…別に図星だったら図星だよ〜って言えばいいのに」
「言う人いるの」
「言ってほしかったです。で、手を取って…俺だけのプリンセス…好きだよ…」
「馬鹿じゃないの」

彼女は無理やりの低音(イケボ？)で、手を胸に当ててわざとらしくそう言った。
まぁこれは冗談だろう。

「…で、本当の言いたい事とは？」
「……あー………」

言わなきゃ。
ここまで来て、引き下がるなんてかっこ悪いことがあるか。
でも、思うように言葉が出てこない。
あの二文字を言えば良いわけなのだが、言おうとすると喉で行ったり来たりするだけ。
そんな勇気もなかったのか、なんて思う。

「……？」
「…あーーーっもう、分かった。…図星だよ」
「……」

不機嫌そうにこちらを見つめるA。
適当に言ったからだろうか。
それとも本当にプリンセス扱いでもして欲しかったか。

「…あ、ここ、家です」
「え？」

彼女が立ち止まった。
突然の別れ。
無理だ、こんな状況で言うのか？

「図星だよ、なんて告白めちゃくちゃかっこ悪いですねぇ先輩」
「…うっざ……」
「はい。これはめちゃくちゃカッコイイ告白でもして挽回しなきゃいけませんね！」

なにか期待した目でこちらを見上げる。
俺は、正直焦ってる。

「ちなみに、私も好きなんで」
「……！？」

今ので顔から湯気が出たんじゃないか、なんて考えられるくらい顔が熱くなる。
…かっこ悪い。
俺は、すかさず彼女を自分の腕に閉じ込めた。

「……！」

心臓の音はきっと聞こえてる。
けど、少しはカッコついただろうか。

「……あの、先輩…」

照れてる。
…照れてる、のはいいんだけど。

………こっからどうしよ…。





――――
瀬名泉は恋愛に関しては不器用だといいな。

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