３１話 ページ32
柊を空いてる部屋に促す。
…多分、ここなら使ってもらって平気だ。
荷物は、必要最低限の使えそうな物を、彼女のスーツケースに突っ込んで持ってきた。
そして、元来た道、ではなく、緩やかな坂を下りてきた。
そんな道が存在するならそこを通って登りたかった、なんて文句言うタイミングはとっくに逃した。
「……」
柊はまだ、腑に落ちない表情を貼り付けている。
まぁ、強引だったし、仕方ない。
「…あのさ」
表情を変えないまま、彼女は口を開いた。
「…私、こんな恩貰っといてどうやって返せって言うの。…そんなに、優しくしなくてもいいんだよ」
静かに、冷たく、俺を突き放す。
…でも、ここまで来たら引き下がるわけにもいかない。
やり始めたなら最後まで成し遂げる。
俺は今、感情のままに動いている。
誰にも止めることなんて出来なかったんだ。
「いいじゃん。貸しでしょ？それを返してくれたんだ〜とでも、」
「そんなの……比にならない。私の気が済まない。…どうする？何すればいい？…人殺しくらいならやるけど、…お金は、払えない。」
…冗談だろう。
きっと、その声は冷たくて、静かで、鋭い物だったとしても、彼女は冗談なんか苦手なはずだ。
苦手なことを無理矢理にでもやろうとしたら、そんな、ありえないこと…
「…そんなのいらない。俺はただ、“貸し”を返しただけにすぎない。…それでも、あんたの気が済まないって言うなら、……」
「……」
柊は少しだけ揺れる瞳をこちらに向ける。
俺は、しっかりとそれを見据えた。
「…毎日、料理でも作ってよ」
「………」
彼女は黙り込んだ。
俺も黙り込んだ。
…仕方ない。これしか浮かばなかった。
でも、まぁ、これでいいんじゃないか…。
いや…いいのか…？
「…そんな、バカみたいなことで？ふざけんな。今は冗談、いらないこと分かってんだろ？」
「……冗談…じゃない。…俺は、本気で頼んでる。………お願いします」
俺は、軽々しく頭を下げた。
それが、もちろん彼女にとっても、そして、自分にとっても、…有り得なかった。
「…なんで、こっちがお願いされなきゃいけないの。…作るから…顔、上げろ」
「…ありがとう」
彼女は気まずそうに目をそらした。
…まぁ…こっから…同棲生活みたいなものが始まったわけだ。
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ハム公(プロフ) - もりちあのめがねさん» ｱｱｱありがとうございまｧｧｧｧｯｽ!!!!今のとこあんま喰種要素出せてなくてすみません…笑 更新遅くなると思いますが、最後までみとどけていただければ嬉しいです…！ (2017年11月7日 18時) (
レス) id: 9d4c60e419 (このIDを非表示/違反報告)
もりちあのめがね - 最初、あんスタと東京種喰って最高やんけと思って読んだら最高でした。神です!!!セナも大好きだし!!!更新楽しみにしていまｱｱｱｱｱｯｽ!!!!!!!! (2017年11月6日 16時) (レス) id: e231ea7ad2 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2017年9月17日 17時
