35話 ページ35
「母さん。オレに任せて」
イルミは自分の中の家族という括りに入ってくるやつが、どんなものかと気になった。Aが嫁ぐにしろ、この家に危険が及ぶようなことは避けなければいけないという思いがあった。
それから約1週間後、最終的な調整を終えイルミのスーツが出来上がった。キキョウのセンスは良く、スタイリッシュかつ洗練されたデザインは高潔な印象を与えた。
イルミが着ると背の高いこともあって実年齢よりも大人に見えた。
一通り確認し執事にスーツを預けたところで、イルミはそれまでしていた作業に戻った。
あの日、キキョウから貰った資料をデスクに広げる。
そして、パソコンの画面に映る情報と手元の写真を照らし合わせる。イルミはAの婚約者候補について提示された情報の他に、いくつか気になるところがあったため調べていた。
候補は全員パドキア共和国在住で自分たちよりも年上だった。特に優れているわけでもなく目立って悪い噂もなかった。イルミから見れば裏稼業をしている彼らも至って平凡であった。
また、Aはこの中の誰かと普通の幸せというものを築くのかと他人事のように思った。
それでも婚約が決まる前に一度、自分の目で彼らの人物像を確かめたい気持ちがある。よって、元々あった仕事のついでに、偵察まがいのことをしようと考え計画を立てていた。
「失礼致します。イルミ様」
先ほどスーツを預けた執事が部屋を訪れ、「旦那様がお呼びです」と続けた。イルミは「わかった」と言ってパソコンをシャットダウンし広げた資料をしまう。
大方仕事のことだろうと信じて疑わなかったが、自分にはAのような話が振られないようにして欲しいとだけ願った。
シルバの部屋に入るとAが椅子に座っていた。
イルミの気配に気づいたAが振り返り目が合った。特段変わった様子はなくリラックスしている。
そして、シルバが「座れ」と言ったのでAの隣にある椅子に腰を下ろした。本題の前に最近はどうだという話から入り、イルミは「普通だよ」と答え、Aは「楽しいよ」と答えた。
「そうだ、パパ聞いてくれる?あのね」
そこからはAが前のめりになってミルキの話をし始めた。
イルミはAとミルキがゲームをするようになったことを知っている。前に誘われたことは何回かあったが全て断ってきた。夢中になってゲームをするような柄でもないのを自覚している。
イルミは一方的にも見える会話を隣でぼうっと聞いた。
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マニ。(プロフ) - 連載の方とかの新しい作品とか待っています!これからもボードの方でも仲良く、ファンとして遠くから応援してます!おかか様! (10月8日 9時) (レス) id: e240ea4865 (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - 千凪さん» ありがとうございます。嬉しいです! (2022年3月10日 14時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
千凪(プロフ) - すごく面白いです!続きがとても楽しみです (2022年3月9日 7時) (レス) id: 129c41ba6d (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - リトさん» コメントありがとうございます。感想を頂けて嬉しいです!頑張ります!更新は遅いですが今後も読んでもらえたら幸いです。 (2022年2月28日 21時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
リト - とても面白かったです!お話作るのが上手で尊敬してます。無理をせず更新頑張ってください。いつでも待ってます。 (2022年2月25日 2時) (レス) @page29 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おかか | 作成日時:2022年1月23日 14時