36話 ページ36
「各々何かしら予定が入っていると思うが、頼みたい仕事がある。お前たちのどちらかでいい」
渡された資料にはターゲットの情報と期日が指定してあった。報酬の振り分けは良い値だがここから結構な距離がある。イルミはいつもは父親の頼みなら受けていたが、この期間は候補たちの偵察をしようと思っていた。
「A/イルミ」
ほぼ同時に名前を呼び、お互いの顔を見合わせる。次の言葉が出る前に数秒無言の時間があった。
それも、ふたりとも拘束時間と報酬額を天秤にかけたとき、時間を奪われる方が嫌だった。お金には困っていなかった。
「イルミ行ってくれるんじゃないの?」
「オレがいつそう言った?」
Aはさも当たり前のように言った。まさか自分が行くという選択肢があるとは思わず驚き、すぐには納得しなかった。イルミも自分のペースを崩されたくないので引くつもりはなかった。立てた計画を今更バラスとなると時間の無駄だ。
「だってこういうのいつもイルミじゃん」
「前オレがやったから次はAの番だよ」
「そんなルールなぁーい」
イルミは眉ひとつ動かさず無表情、Aは口を尖らせて不満げだ。下の弟たちの前ではちゃんとお姉ちゃんをしていたが、今のAは幼い子どもに見えた。
その後もシルバがいるのも関係なくふたりの間で押し付け合いは続いた。
「ダーツで決めたらどうだ」
シルバの深い渋みのある低い声がその場の空気を割いた。口角は少し上がっていたが目は笑っていないように見えた。
その提案に対してイルミは「そうする」と答えたが、Aは口を噤んだままだった。
プレイルームに移動しゼロワンを始めてから、イルミの1ラウンド目が終わった。難しくもなんともないようにT20を3つ決めて次へと進む。
イルミはダーツが得意だった。
それは暗殺の技術以外に初めてシルバから教わった思い出深いものだった。これまでに何回かプレイしたことがあり、どの場面でも自身の手先の器用さと精密な動作が発揮された。
イルミが初めて9ダーツを決めたときに、口角を上げたシルバからお前もやるなと言われ、こそばゆい感じがしたのを覚えている。
しかし、その高い能力を持ってもシルバに勝つことはなかった。いつしか楽しむことよりも勝ち負けに重きを置いた。シルバとプレイしたのは片手に収まるぐらいだったが、その後も1人で的を目掛けて放った。
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マニ。(プロフ) - 連載の方とかの新しい作品とか待っています!これからもボードの方でも仲良く、ファンとして遠くから応援してます!おかか様! (10月8日 9時) (レス) id: e240ea4865 (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - 千凪さん» ありがとうございます。嬉しいです! (2022年3月10日 14時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
千凪(プロフ) - すごく面白いです!続きがとても楽しみです (2022年3月9日 7時) (レス) id: 129c41ba6d (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - リトさん» コメントありがとうございます。感想を頂けて嬉しいです!頑張ります!更新は遅いですが今後も読んでもらえたら幸いです。 (2022年2月28日 21時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
リト - とても面白かったです!お話作るのが上手で尊敬してます。無理をせず更新頑張ってください。いつでも待ってます。 (2022年2月25日 2時) (レス) @page29 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おかか | 作成日時:2022年1月23日 14時