協専ハンターは大変です【H×H】 (ページ6)

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6話外れた頭のネジページ6

私はエレベーター内の階数表示を見ながらビーンズさんに話しかける。

｢ビーンズさん聞いてくださいよ｣
｢なんですか？｣
｢電話もらった日あるじゃないですか。その日の任務で私結構メンタルやられたんですよね｣

つい｢あはは｣と自虐的に笑ってしまう。私は元々自己評価が高い人間ではないが、相手を立てるために自分自身を卑下しているつもりもなかった。それに｢そんなことない｣という言葉も求めてはいない。ただの悪い癖だ。自分でもめんどくさいと思うときがある。

｢珍しいですね、何かあったんですか？｣
｢私腕落ちました。予定だと半日で終わるはずだったのに、一日費やしちゃって｣

ビーンズさんはそんな私の話を聞いてくれる限られた人だ。私の性質を理解してくれていて、肯定も否定もしない。ただ話を聞いて欲しいときに聞いてくれる。それにハンターの中では貴重な、まともで常識がある人だから頼りにしている。

｢Aさんのそれってどこの案件でしたっけ？｣
｢ああうーんと｣

ビーンズさんの質問に私は｢××地区の××ビルです｣と答える。エレベーター内の階数表示を見ると、もう少しで会長室のある階に到着するようだ。ぐんぐん数字が増えていく。
そして、ビーンズさんは｢あれですね｣と言って口を開いた。

｢そのAさんが受け持ってくれた件ですが、本当は8人ほど募集してたんですけどなかなか集まらなくて｣
｢仕方なくAさんのみで行ってもらいました。いやあ、一人で片付けてくれたのでとても助かりました！｣

チンとなってドアが開いた。ビーンズさんはニコニコしながらエレベーターを出る。私は自然と｢え？｣と声を出してしまった。サラっと事実を告げられたことに対して理解が追いついていない。それでも開いたドアが徐々に閉まっていくので、体が挟まりそうになりながらも脱出する。

｢じゃ、じゃあ私8人分働いたってことですか？報酬は？私、8人分のお金貰ってないですよ！｣

先に進むビーンズさんのところまで、やや早歩きになりながら進み追いついた。追いついたはいいものの、私の頭の中はまだハテナだらけだ。

｢一人あたりの報酬は決まってますし｣
｢残業代ください！っていうか下手すれば死にましたよ｣
｢生きて帰って来れてるじゃないですか｣

ビーンズさんを常識人だと思っていたのは間違いだった。この人もちゃんと頭のネジが外れていたんだ。考えてみればあの会長の秘書だし。それが1番しっくりする。
私は理解するのを止めた。