協専ハンターは大変です【H×H】 (ページ3)

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3話缶のホットコーヒーページ3

目を疑った次は耳を疑うのか。

私はそろそろ身体の健康にも気をつけないといけないらしい。まだ20歳にもなってないというのに、次々と現れる身体の不調に悩まされている。

え？まあ期間は別として、報酬が無し？私はお金にならないものは仕事だと認めていない。それに今の私はお金のために働いていると言える。ボランティアなどは素晴らしい心を持った人達に任せてればいい。報酬なしなどそんなブラックな仕事があるか。

｢もしもしAさん？｣
｢すいませんちょっと疲れていて、あの報酬は？｣
｢無いです｣
｢あの、報酬｣
｢無いです｣

ビーンズさんは普段のトーンと変わらずに現実を突きつけてくる。きっと表情もそのままなのだろう。電話越しのはずなのに彼の内面の冷たさを感じた。

いくら私が頼まれたら断れないやつだからといって、タダ働きを強要するのは良くないと思う。ビーンズさんは、私が人に流されて生きてきた人間なのを知っているからこそ、その判断は酷いと言える。

｢いくらビーンズさんの頼みだからって、報酬なしじゃ引き受けられません。すみませんがお断りします｣
｢いや、私じゃないんです。会長からです｣
｢は？会長？｣
｢あと、拒否権は無いです。三日後の午前中に本部に来てくれ、と会長からの伝言です｣

私は口をあんぐり開けて半分放心状態だ。｢失礼します｣とビーンズさんの声が聞こえたのを最後に電話は切れた。
ここが圏外だったら良かったのになあ、なんて思いながらまた歩き始める。

早朝、この道の人通りは全くと言っていいほどない。新聞配達だろうか、家々のポストに手際よく新聞を入れていく。ポストがパンパンに詰まっているところもあり、その場合は無理やり捻りこんで隣の家に行く。

私はぼんやりとその様子を見ながら街を歩く。無意識のうちに現実逃避をしたいのか、普段なら見向きもしないそれらに目を奪われた。

自動販売機の前を通ると、そのラインナップに目を通す。特に飲みたい物もなく、ぱっとしない品揃えだった。それでも何だかお金をいれたくなって、ホットコーヒーのボタンを押した。

｢あちっ｣

ホットの缶は無条件に熱いのを忘れていた。落としそうになるが、缶の端っこを摘むように持って蓋を開ける。コーヒーを喉に流し込むと体の中心から熱が広がっていく。

あの冷たい風は相変わらず私の頬と鼻をびしびしと突き刺してくるが、空は明るくなり始めていた。