9話 食糧の夢 ページ10
「―――じゃあ、しばらく世話になるぞ。いいんだな？」
「さすがにそんな状態のあなたをこのまま放ってはおけないもの。
下手したら死んじゃうよ？」
「食料は･･･」
「食べ物のことは気にしなくていいよ。当分は困らないから。
そのかわり、元気になったらお店手伝ってね。･･･ほぼお客さん来ないけど」
話し合った結果、彼はこの喫茶店の一時スタッフとして雇うことになった。
･･･というのは建前で、本当はフラフラな状態のこの人が心配で私が引き留めたのだ。
だって、このまま外へ放り出したら死んじゃいそうだもん。
自分の家があるならまだしも、「家はある？」って聞いたら「跡形もなくふっ飛ばされた」と返された。
まあ、このご時世珍しくないことだ。
「俺はソニック。お前は？」
「A。よろしくね、ソニックくん」
「･･･敬称はいい。変な気分だ」
「わかった。ソニック。
まだそこで横になってたほうがいいよ。
何か食べたいなら作るけど」
「いや、いい。少し･･･休ませてくれ･･･」
「うん」
ソニックはそのままふっと意識を手放した。
さっきまで極限状態だったのだ。当分起きそうにない。
「ここにはあなたを脅かすものは何もない。
ゆっくり休んでね･･･」
その黒い前髪をさらりと撫でた。
＊(※ソニック視点)
深い意識の底で夢を見る。
今まで自分の糧にしてきた者たちが「こちらへ来い」と手招きしている。
それは、悪魔の囁き。
地獄への誘い。
あの絶望が空から降り注いでから今まで以上に人間の醜いものを見てきた。
だからどうということはないが、俺の生活にも変化があった。
食料の奪い合い。
物資がほぼ出回らなくなって人間たちは極限状態だった。
飢えと寒さで死んでいく者も多かった。
極限状態の人間ってやつは何をしでかすかわからない。
かく言う俺もその一人だ。
以前ならば誓ってもそんな行動には出なかっただろう。
絶対にありえないと。
気持ち悪いと思っていた。
しかし。
本当に口に入れるものが何もなかったのだ。
だから･･･
飢えた人間が
同じく飢えた人間を
食糧にするのを見て･･･
なるほど･･･と･･･思っ･･････
･････････
･･････
･･･
･･
＊
―――ララ･･･ラ･･･ラ･･･
歌が聞こえる。
優しくて、あたたかくて、とても懐かしい気持ちだ。
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ナビィ(プロフ) - 続きが気になる、設定の思想が強くてとても好きです (2022年12月18日 22時) (
レス) @page16 id: e35ee85d42 (このIDを非表示/違反報告)
しわ(プロフ) - もるかさん» ありがとうございます！コメント嬉しいです！！！ (2018年3月11日 12時) (レス) id: f999ed7858 (このIDを非表示/違反報告)
もるか - 設定がとてもいいですね！ (2018年3月11日 1時) (レス) id: e3e8e90bb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しわ | 作成日時：2017年12月16日 0時
