重ねるもの-土方side- ページ31
*
「副長、何か用意するものはありますか?飲み物とか、氷枕とか」
「いや大丈夫だ。熱もさっきより下がってっからもう少しで起きんだろ。仕事に戻って良いぞ」
チラリと心配そうにAへと視線を向けた山崎だったが俺の言葉にホッとしたような表情を浮かべ「では、失礼します」と言い仕事へと戻って行った。
カチ…コチ…。
机の上に置かれた薄ピンク色の時計が秒針を刻む。
怖いくらい静か…じゃねェな。襖の向こうからは職務中であろう隊士の声がちらほらと聞こえる。
いつも通りの屯所。しかし、いつもみたいにうるさい女中がいない。
(……こいつが元気無ェだけで、こんだけ静かに感じるもんなんだな)
もしかしたらそう感じるのは俺だけかもしれないが。こいつの声が響いていない屯所はいつもよりやけに静かに感じられた。…それほどまでに俺はこいつに惚れているのが。はたまた、俺の耳がこいつの声を多く聞き取るよう出来ているのか。まぁどっちにしろ惚れた弱みと言う奴には変わりない。
まさか自分がここまで誰かを想うことがもう一度あるなんてな……。
天井に向けて大きく息を吐けば、武州に居た頃の記憶が蘇る。
しかしあいつの笑顔に重ねてしまうのは岸谷Aの姿だった。
Aにあいつを重ねているのではなく。あいつにAを重ねている。
俺の中で、あいつが――ミツバが大切な存在であるという事は今までも、これからも変わりないが今ではそれ以上にきっとAの事が大切なのだろう。
寝ているAの髪をそっと梳く。
いつもは結わているが、長く柔らかい髪はとても触り心地が良かった。
「……ん、」
不意にAが小さく声を漏らした。
起きたか?そう思い声をかけようと顔を覗き込む。と…
「―――ひじ、か、たさん」
緩む頬-土方side-→←アホな女と、アホな男-土方side-
454人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅華(プロフ) - 閃光の歌姫さん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉ありがとうございます泣!!! (2017年12月30日 13時) (レス) id: c24c6aa26f (このIDを非表示/違反報告)
閃光の歌姫 - うおおおお!心理描写とか上手すぎて泣きそうになりました… (2017年12月30日 0時) (レス) id: 873bf975e9 (このIDを非表示/違反報告)
紅華(プロフ) - 舞佳さん» ありがとうございます!twitterでフォローして頂いた方ですよね??コメ欄でも…嬉しいです!泣 土方さんにキュンキュンして頂けて本当に嬉しいです。次回作も頑張ります!!! (2017年12月27日 19時) (レス) id: c24c6aa26f (このIDを非表示/違反報告)
紅華(プロフ) - よしなさん» 返信遅れてすいませんでした!!応援ありがとうございます!!無事完結しました!ありがとうございました!! (2017年12月27日 19時) (レス) id: c24c6aa26f (このIDを非表示/違反報告)
舞佳(プロフ) - 完結おめでとうございます!土方さん素敵過ぎてキュンキュンしてしまいました!!次回作も楽しみにしてます!頑張ってください!!! (2017年12月27日 19時) (レス) id: eb455c1ed7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紅華 | 作成日時:2017年6月30日 20時