【A3 !】ヒガンスキ【兵頭十座生誕祭2017】 (ページ1)

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第三回秋組公演、《任侠伝・流れ者銀二》前楽日。

公演中でそんな事しか頭になかった俺は、朝起きて皆に祝いの言葉をかけられるまで今日が自分の誕生日であると言うことをすっかり忘れていた。

今までわりと、自分の誕生日なんざケーキを食える以外は一歳年をとるくらいにしか思っておらず、どうでもいいと思っていたが、こうやって大勢に、誰かに祝ってもらうって、なんか、くすぐってぇ。

こう思えるようになったのも、この劇団に入って、みんなと、秋組と、カントクと、……Aに会えたからだろう。…………なんて、らしくもねぇクサい考え方をしてみる。

_____矢野A。花咲学園高校の3年で俺と同級。ふわふわとした見た目とは裏腹に芯のしっかりとした女である。そんな彼女は、俺がここに来た時には既にここに居た。どうやら、咲也のツテで縁があったらしい。

周りをよく気にかけ、些細な変化にも気づく。どんな事もある程度人並みにこなして、勉強も悪くない。典型的なクラス委員長みたいなタイプ。真面目、優等生が服を着て歩いているような彼女は、俺にとって只々まぶしい存在だった。

___俺と違って、周りにキャラを固められていない、素でこの性格の人間。

こう思っていた俺は、当然最初は彼女を避けた。O高1のヤンキーが彼女の周囲にいるだけで彼女の評判が下がるだろうと思ったからだ。

そんな俺に、彼女はあろう事かどんどん近づいてきた。仏頂面で周囲に散々怖いと恐れられてきたこのなりに怯むことなく。