真逆で始まる奇妙な冒険～ヴェスパー・リリー～ (ページ19)

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第19話「さようなら」ページ19

「ジョジョ…人間ってのは能力に限界があるなぁ」
ディオが一人で語り出す｡
「俺が短い人生で学んだことは､人間は策を弄すれば弄するほど予期せぬ事態で策が崩れさるってことだ…!人間を越える者にならねばな…」
「なんのことだ?何を言っているッ!」
「俺は人間をやめるぞ!ジョジョーッ!!」
ディオが懐から石仮面を取り出しナイフを手に持つ｡
「俺は人間を超越する!ジョジョ､お前の血でだァーッ!」
私はジョナサンの前へと一歩踏み出す｡
ディオがナイフをそのまま振り下ろすと思い､目を瞑った瞬間､身体にナイフとは思えない別の衝撃が走り､横へと倒れた｡
「え…」

驚いて目を開け､起き上がろうとしたその時､目の前に見たくはなかった光景があった｡
「と…父さんッ!!」
「お義父さまッ!!」
ナイフを刺されたジョージ､そしてその血を浴びた､石仮面をつけたディオ｡
「奴を射殺しろぉーッ!!」
警官たちの銃弾がディオに注がれ､窓の外へと吹き飛ばされる｡

「ああ…なんてことだ､ナイフなんて普通なら避けれたのに!」
ジョナサンが悲痛な声を出しながらジョージの左手を握る｡私は声すら出せないで座り込んでいた｡
「径が…小さいので…小指に…して…いたが…死んだ…母さんの指輪だ」
ジョージの左手の小指に嵌めていた指輪がキラリと光ったかと思うと彼の手がジョナサンの手から滑り落ちた｡
「父さん!」
「お義父さま!」
「早く手当を!」
「医者だ!医者を呼べーッ!」
警官たちが駆け回る｡
それを見ていた警部が後悔の記憶を語り出した｡
自分がディオ・ブランドーの父親を流刑にしていればこんな事には､と｡
「ジョジョ…A…」
「父さん!しっかり!…医者が来れば助かります!」
「そうですよ!今､もうすぐお医者様が!」
「ジョジョ…ディオを恨まないでやってくれ｡私が悪かったのだ､実の息子ゆえに厳しく教育したけれどディオの気持ちから考えるとかえって不平等に感じたのかもしれない…それが彼をこのような事に仕向けたのだろう｡ディオはブランドー氏のそばに葬ってやってくれ」
本当にお人好しだこの人はと涙を浮かべながら思っていると､ジョージは私にも声をかけた｡
「Aも､どうかディオを恨まないでほしい｡…それと､ありがとう｡君には本当に感謝している…」
私もジョージを手に抱くように縋り付く｡
「悪くないぞ…ジョジョ…A｡息子と娘の腕の中で…死んでいくという…のは」

ジョージ・ジョースターは､静かにその生涯をとじた｡