真逆で始まる奇妙な冒険～ヴェスパー・リリー～ (ページ16)

今日:16 hit、昨日:6 hit、合計:33,689 hit

第16話「鈍く崩れてゆく」ページ16

ジョージの部屋に居ると､ジョナサンとディオの活躍により､見事ラグビーの試合で勝利を納めたとの報せを受けた｡
「流石､あの二人ですね」
「ああ…鼻が高いよ」
そう言ってジョージは微笑むが弱々しい｡

そばにいてほしいと言われ､暫く居るとジョナサンとディオが部屋に入って来て､家族団欒といった感じの会話をした｡

私は､コレが真実だったならと縋るように心の片隅にそんな考えを置いていた｡

しかし､そんなモノは子供の様に幼い幻想だと私はすぐに思い知る事になるのだ｡

平凡な日常は既に脆く､亀裂が入り､音を立てて崩れる寸前だったのである｡

「…やっぱり…ディオが」
分かっているのに…確信したくない自分がいた｡
ジョージの部屋を出た後､ずっと鬱々としている｡

廊下をぶらぶらと歩いていたその時｡
ジョナサンとディオの声が聞こえた｡

駆けつけた時には既にジョナサン1人だった｡
手には薬を持っていた｡
「どうしたのジョジョ!?」
「!…A､頼みがあるんだ!」

ジョナサンは私に､頼み事をし､ロンドンへと向かった｡
内容はこうだった｡
ジョナサンの用意した､医者以外にジョージを診せない事｡私の場合も､もし具合が悪くなればその医者たちに診てもらう事｡出来るだけジョージのそばに居る事｡そしてディオの動きに注意する事｡

「……いよいよ…始まるのか…」
私は窓際で俯きながら呟く｡

雪が降り頻る中､ジョースター家の屋敷を一匹の黒猫が見つめていた｡
中の者は誰一人その猫に気づく事はない｡
猫は窓際に立つ女を見つめていた｡

そして人知れずふらりと居なくなっていた｡