検索窓
今日:2 hit、昨日:4 hit、合計:107,272 hit

ページ9

その違和感は今度はお尻の方までやってきた。


まさか、痴漢…?


そっと体を強ばらせる。
……やっぱりそうだ。気持ち悪い手が、お尻を撫で回す。
怖くて、どうしようもなくて、震えていた。
早く、早く駅に着いて…!!!
ぎゅっと目をつぶってその嫌な感覚から目を背けていた時だった。


「おじさん、嫌がってるでしょ」

聞き覚えのある声に顔を上げるとそこには、あのお巡りさん。
だけど、いつもと違う、私服姿だ。
お巡りさんに手を掴まれたおじさんは焦ったように声を上げる。
言い掛かりだなんだと叫ぶその人に、思わず怯んでしまった。
そんな私の様子に気付いたのか、そっと私を自分の背中に隠すように立つ逞しい背中。
すごい心強かった。


駅に着いて、私とお巡りさんとおじさんはホームに降りる。
まだおじさんは認めないようで大きな声で騒いでいて、ホームではなんだなんだ?と注目を浴びた。
認めないおじさんにお巡りさんは痺れを切らしたのか、ポケットを探り黒い手帳を取り出した。

「俺に見つかっちゃったのが悪かったね、おじさん。俺警察なんだ。だから現行犯逮捕だよ」

そう言って手帳を見せつけたお巡りさんの横顔はすごくカッコよくて、こんな状況なのにドキドキした。
おじさんは観念したように肩を落とし、そのまま私とお巡りさんとおじさんで駅員室まで行くことになった。


状況説明をして警察が来るのを待つ。
暫くすると2人の警察官が来て、私の隣に座るお巡りさんの顔を見ると目を見開いて「福尾!お前が捕まえたのか!」と驚いた様子だった。
おじさんを引渡し、やっとの事で駅から出る。
お礼を言わないと、とお巡りさんの方へくるりと向き直った。

『あの、助けてくださってありがとうございました』
「え?あぁ、とんでもない。あの場に俺がいて良かったです」

そう言ってにっこりと笑うお巡りさん。

『お巡りさんいなかったら本当…私…』

そこまで言って先程の恐怖を思い出し言葉を詰まらせると、お巡りさんはにっこりまたあの優しい笑顔を見せてくれた。

「福尾」
『え?』
「俺の名前、福尾亮です。よく1人で頑張りましたね」

そう言って大きな手で頭を優しくぽんぽんと撫でられる。
その大きな手にすごく安心してしまい、自然と涙が流れてきた。
福尾さんはポケットからハンカチを取り出すと私に手渡してくれた。




今日はその借りたハンカチを返しに行く。
そして、伝えるんだ。
私の名前。
まだ、伝えてないから。
それが、私と彼の出会い。

黄×ゲーセン店員→←→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (111 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
273人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ヨウ(プロフ) - ななみさん» そう言っていただけて良かったですー!また続編の方にも遊びに来ていただけると嬉しいです! (2019年6月25日 0時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - キュンキュンしちゃいました〜!すっごく読みやすい文章で大好きです!ありがとうございます! (2019年6月20日 22時) (レス) id: d77610da69 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - なぁさん» いつもありがとうございます!中村先輩、まだキャラがブレブレで申し訳ないです…続編頑張りますね! (2019年6月20日 21時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - ななみさん» ありがとうございます!寛太先生続編書かせていただきました!期待に添えたものではなかったら申し訳ありません…また遊びに来ていただけると嬉しいです! (2019年6月20日 21時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» リクエストにお答え出来るようなお話書けるか分かりませんが…はたらくおにいさん。の橙くんはツンツンキャラが多かったので頑張ってみますね! (2019年6月20日 21時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ヨウ | 作成日時:2019年4月21日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。