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「………これ、重たいんで。中まで運んでいいっすか」
ひょい、とそれを持ち上げて見せたので確かに入れて貰えるとありがたいと思いお願いした。
すれ違う時にふわっと香ったいい匂い。
どすん、と結構な音を立てて床に降ろされた荷物。
わ、本当に結構重たいんだ。
お兄さん華奢なのに、力あるんだな…
パッと見ると今まで気付かなかったが、腕がかなり太くて逞しい。
何だかその姿にドキッとしてしまった。
私の視線に気づいたのかお兄さんは、気まずそうに目線を下げて「すいません…」と一言だけ言うと玄関をすっと出ていった。
『待ってください!!』
突然の私の大きな声に、びっくりしたような表情で振り向くお兄さん。
さっき運んでもらったダンボールを開け、中からペットボトルのお茶を1本取り出してお兄さんを追い掛けた。
すっとペットボトルを差し出すと、困惑したような表情を見せる。
『どうぞ、ただのお茶ですけど…』
「え、あ、いや…流石に頂けない、です…」
『良いんです!もらってください!』
半ば強引に押し付けると、少し苦笑いを浮かべたお兄さん。
……こんな表情も見せるんだ。
『いつも、ご苦労様です。ありがとうございます』
そう声を掛けると、照れくさそうに頬を掻きそっぽを向くお兄さん。
「ありがとうござい、ます。いただきます…」
そうボソリと呟くと軽くペットボトルを掲げてそのまま近くに停めてあったトラックに乗り込み行ってしまった。
『あんな表情も、あるんだ』
思わずくすりと笑ってしまう。
母の言っていた好青年って言うのも、分かった気がする。
ほんの少しだけね。
先程運んでもらったダンボールに書かれた、お兄さんの名前。
『鈴木さん、か』
あんなにちょっと疎ましかった宅配便も、何故か少し楽しみになっていた。
あの日からウチに宅配便が届くこともなく、鈴木さんに会うこともなかった。
ほんの少し、私の脳裏から消えかかっていた頃。
珍しく早くに仕事が終わり、のんびり帰り道を歩いていると、見覚えのある制服。
多分あの後ろ姿。
鈴木さんだ。
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ヨウ(プロフ) - ななみさん» そう言っていただけて良かったですー!また続編の方にも遊びに来ていただけると嬉しいです! (2019年6月25日 0時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - キュンキュンしちゃいました〜!すっごく読みやすい文章で大好きです!ありがとうございます! (2019年6月20日 22時) (レス) id: d77610da69 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - なぁさん» いつもありがとうございます!中村先輩、まだキャラがブレブレで申し訳ないです…続編頑張りますね! (2019年6月20日 21時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - ななみさん» ありがとうございます!寛太先生続編書かせていただきました!期待に添えたものではなかったら申し訳ありません…また遊びに来ていただけると嬉しいです! (2019年6月20日 21時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» リクエストにお答え出来るようなお話書けるか分かりませんが…はたらくおにいさん。の橙くんはツンツンキャラが多かったので頑張ってみますね! (2019年6月20日 21時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨウ | 作成日時:2019年4月21日 1時