はたらくおにいさん。

富×美容師 ページ19

カランコロン…




行き付けの美容室の扉を開ける。
久しぶりに来たそのお店。
白と黒のモノトーンを基調としたこの美容室は、この店のオーナーの趣味の良さをよく表している気がする。

『こんにちはー』
「おっ、久しぶりA」

入ってすぐのカウンターにいた、私の専属の美容師さん。
そしてこのお店のオーナーでもあるマホトさんだ。

『お久しぶりです。今日お願いします』
「ん、任せとけ。最近来てなかったけどどーしたの？まさか、他の店に浮気とか？」
『まさか！！ただ単に忙しくて来れなかっただけですよ』
「なら良かったー。お前他店に取られたらマジで困るもん俺」

そう言って私の頭をぐしゃぐしゃーっと撫でるマホトさん。
マホトさんは前マホトさんが勤めてた大手美容室の頃からお世話になっていて、マホトさんが自分の店を持つと聞いて私もマホトさんに付いていく形になった。
いつもこうやって妹のように接してくれて、本当に素敵な人だ。

「今日どーする？希望とかあんの？」
『えーっと、最近かなり伸びっぱなしなんで少し短めにして揃えて欲しいなーって。あ、あと春らしくちょっとパーマ掛けたいかも』
「おっけー」

もう長い付き合いだから、マホトさんは私の髪質をよく理解してる。
だからこんな風にざっくりとイメージ伝えただけでもしっかりと素敵な髪型に仕上げてくれるのだ。

「あ、Aー。今さぁウチの新人教育してんだけどさ、パーマ練習させてもらってもいい？一応かなり腕良い奴だから心配ないと思うけど、パーマの分お代はいらねぇから」

マホトさんが少し眉を下げたようにこちらに尋ねる。こんな彼の表情見れるのもなかなかない。

『もちろん！マホトさんの後輩さんだったら全然信用出来るし、お願いします！』
「ありがてぇ！あ、じゃあそいつにシャンプーもお願いするわ」

カットは俺がするからなー、と言うとマホトさんは1人、少し大柄な男性を呼んできた。


「A、こいつ、富永っつーの。よろしくな」


マホトさんよりも縦にも横にも大柄な男性。
いつもマホトさんみたいに華奢な人にお願いしてるからなんだか圧倒されてしまった。

『よ、…宜しくお願いします…』
「どうも…」

向こうも緊張しているのか、なんとなーく漂う気まづい雰囲気…。
そんな雰囲気を汲み取ってかマホトさんがゲラゲラ笑いながら「お見合いする男女かよ！！」なんてツッコミを入れてくる。
それに対して富永さんは「その役俺の役っすから！」と声を上げた。

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