12 ページ13
「お邪魔しますー…」
『はーいどうぞー』
中に入り彼女がパチンと玄関の電気をつける。
俺はその様子を黙って見ているとAは はー疲れたぁ などと言ってどんどん奥へ入ってく。
……疲れてんのはお前のお守りしたこっちだっつーの。
そんなツッコミを彼女の後ろ姿にしてみるも気付くはずもなく、リビングに入るとこちらを振り向いて「入らないの？」と尋ねてきた。
部屋の中に入れてもらったと言えど、玄関は外と違って風がない位でやはり寒い。
すぐに靴を脱いで彼女の後を追った。
『適当に座ってー』
そう言って暖房のスイッチを入れるとキッチンに消えていく。
適当に、と言われてもどこに座るのが正解なのか。
取り敢えず寒さに勝てない俺はソファの暖房が1番近い場所を陣取った。
暫くすると、マグカップを2つ持ったAが戻ってきた。
『ごめん、私が甘いの好きだからココアぐらいしかないんだけど…』
そう言って、黒のマグカップをはいと手渡してきた。
「いや、全然」
ココア飲むのなんて久々だな、とそれを受け取った。
『えー、てか普通に暖房の前陣取ってるし。そこは女子に譲ってよー』
「良いじゃん。いつものお前みたいに男立てろ」
『としみつさんにはそんな媚び売りませーん！』
何だかんだと俺の隣に座るA。
酒は少し抜けてきたのか、頬の赤みも薄らとしてきた。
ココアをゆっくりと飲むと、じんわりと体の芯から温まっていく気がした。
何となく部屋を見ると、女子だと思っていたがそんなにごちゃごちゃしておらずシンプルに必要なものしか置かれてない部屋だった。
1番目を引くのは、部屋の隅に佇む鏡台。
鏡には布がかけられていて、その周りだけがこの部屋に似つかわしくなく化粧品が所狭しと置かれている。
そしてその隣に丁寧に並べられた雑誌。
その表紙を見ると「男ウケの良いメイク！」だの「完璧女子の秘訣」のタイトルがズラリと並べられている。
そのひとつを手に取ってパラパラと見る。
正直、どれもこれも下らないと思った。
「こんなのに必死にならんでもいいだろ…」
俺の心の声は、つい口をついて外へと漏れていたようだった。
『…こんなの？』
「いやだって、そこまで自分偽る必要あるか？お前には…」
そこまで言うと俺の声を遮るようにドン、とマグカップを置いた。
『……ないで』
「は？」
『私の事何も知らないくせに！知った口聞かないで！元から顔のいいアンタに何がわかるって言うの！？』
彼女が爆発した瞬間だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 312人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ヨウ(プロフ) - Ｒｕｒｉ＊さん» 前作に引き続き今作もご愛読ありがとうございます！確かに、てっちゃん置いてけぼりでしたね…その辺も詰めの甘い作品になってしまい申し訳ないです….ありがとうございます！これからも頑張ります！ (2019年2月13日 18時) (
レス) id: 91827dbe31 (このIDを非表示/違反報告)
Ｒｕｒｉ＊ - 「サブリミナル。」の方でもコメントさせて頂きました。てっちゃんがどうなったのか気になってしまいます笑 これからも体調に気をつけて頑張って下さい！ (2019年2月10日 22時) (レス) id: 4d62ef8048 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - こつぽんさん» ありがとうございます！更新速度は落ちてしまうかもしれませんが、これからも頑張りますのでどうぞ宜しくお願い致します。 (2019年2月10日 15時) (レス) id: 91827dbe31 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - なーゆさん» 辛すぎました…こまめに保存しておかないとダメですね…！ (2019年2月10日 15時) (レス) id: 91827dbe31 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - 孤黒さん» 前作からこちらまで読んでいただきありがとうございます！返信遅くなり申し訳ありません。何とか完結させたので読んでいただけると幸いです。 (2019年2月10日 15時) (レス) id: 91827dbe31 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ヨウ
| 作成日時：2019年1月28日 19時
