八匹目 ページ8
『へ、ぁ、いっ、痛い、です…！あの…い゛っ、ぅあっ…』
徐々に力が込められていく彼の手は、私の手をぎりぎりと締め付けていた。
痛い、痛いのに、離してくれない。
身体を丸めて痛みに耐えていたが、抗議しないと離してくれないと思い、顔を上げた。
『…ぁ、あのぉ…、ひっ、！』
眉を下げて、出来る限り困ってますという顔をしたが、その嘘の顔も直ぐに剥がれた。
彼の顔は怒りに満ちていた。
しかし、暫くした後に、焦ったように呟いた。
「そうか、まだ、足りひんのか」
『え…？』
「うん、そうや、きっとそう、まだ足りひんのやな、いやぁ、蜘蛛神様も食いしん坊で困るわ」
『っ、蜘蛛神様って、あの…』
「そう、願いを叶えてくれる、優しい神様やで、ちょっと食いしん坊やけどな」
『…』
蜘蛛神様って、人を食べる邪悪な神様だって、祖母は言ってた。
村の人達もそう言っていたし、人を食べる時点で優しいなんて有り得ないだろう。
…足りないって、願いを叶えてくれるって。
そんなの、考えられるのは、一つだけじゃんか。
「大丈夫、今は訳分からんかもしれんけど、もう少しで思い出せるはずやから！俺達が出会った時のこと」
『…昔、神社で会ったのは覚えてますよ』
「そんな最近のことちゃうて、もっと、前に会ってるんやで」
私と彼が会ったのは、まだ小学生の頃だったはず。
それよりももっと前だなんて、赤ちゃんの頃に会っているのだろうか。
…まさか、人違いしてるんじゃないか。
いやでも、そうだとしたら色々と偶然が重なりすぎてる。
やっぱり、この人は私が知らないところで何回も会ってるのか。
親戚、とかだろうか。
「ちょうど、また迷い込んどるみたいやしな」
『へ…？』
「この森は蜘蛛神様の巣やねんから、どこにいるかなんて直ぐわかるで、Aの言う、うつしま、とか、あおい、が誰かは分からんけど」
『…待ってください、それって、つまり…』
「生贄やで、この森に入ったからにはな、村におりて狩ってもええんやけど、そうすると俺のご飯届けてくれる人がおらんくなるしな、まあ、性懲りもなく森に入る奴があるから、あ、Aは例外やで、俺に会うために来てくれたんやろ？それは仕方ないもんな」
やっぱり、この人、蜘蛛神様に何かを願ったんだ。
それの代償となる人を、殺して捧げてるんだ。
何を願ったかなんて知らないけど、足りないってことは、鬱も、みんなも、この人と会うのは危険だ。
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うっちゃん - 私もこういうの好きです。~^〜^~ (2020年9月24日 16時) (
レス) id: 000505beae (このIDを非表示/違反報告)
星舞__(*´ `*) - これ読んでる時号泣しました……こういう作品私めっちゃ好きなんですよー！更新頑張ってください！ (2020年9月23日 16時) (レス) id: 5f2a936d4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：五千時 x他2人 | 作成日時：2020年8月14日 10時
