六匹目 ページ6
『いつ見ても不気味…』
「ほんまに」
森の中はひんやりとしていた。
早朝であれど夏なのに、まるで冬のようだ。
腕をさすって摩擦で体を温めるけど、あまり意味はないようだ。
「なあ、A」
『ん？』
「昔、何で森に入ったん？」
『そうだなぁ…確か、葵ちゃんが、看板を見つけて、それで見慣れない道があったの…そうそう、神社に続く道、あ、でも、着いたのは大きな洋館だったなぁ…その後、私だけ森の奥に好奇心のせいか進んで、そこで神社を見つけて…』
「見つけて、どないしたん？」
『…男の人に、あったの、若い男の人』
そう言った瞬間、皆の足が止まった。
不思議なことに、私も歩くのをやめて、考えた。
思い出せそうだった、何か、大切なことを。
暫くの間、私はこの村を離れていたし、森に関しても不気味だとしか感じなかった。
…だけど、異様に似ているのだ、昔森に入った時と。
『私達、看板の横にある道を来たよね』
「…」
『思い込みで素通りしていたけど、あの看板、立ち入り禁止なんて書いてあったっけ』
「…何か違和感があったんは、そのせいか」
『…あの日と同じ、それなら、この先に…』
いてもたってもいられなくなって、三人を置いて走り出した。
あの日と同じ、それなら、きっと、きっとあの洋館があるはずなのだ。
…しかし、走っている途中で気付いた。
いつの間にか、階段を上っていることに。
『…嘘、どうして…私…』
混乱する頭の中で、あの男の人を思い出した。
大人になったら、また。
彼は確かにそう言った。
もしかして、彼はあの時、私がここを再び訪れることを知っていたのだろうか。
それなら、あの日起きた出来事は、偶然じゃなくて、鬱がこの森に入ったのも、三人と再会したのも。
…全て、必然で、意図的だったと言うこと…？
だとしたら、あの日、葵ちゃんがどうなったのかも、彼なら知ってる、はず。
『っ…！』
駆け上った。
大人になったからか、神社の鳥居は昔より小さく思えた。
だけど、蜘蛛の巣だらけの真っ黒なその神社の不気味さは変わらず。
…そして、
「そんな急いで、俺に会いたかったんか」
嬉しそうに笑う、若い姿の彼も。
どうして、あの時と同じままなの。
若作りしたって、声も、背も、顔も、何一つ変わっていないのは…。
…私、何で、彼が変わっていないって、断言できたんだろ。
私が彼を見たのは、ほんの数分、しかも、それは何年も前の記憶なのに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 242人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うっちゃん - 私もこういうの好きです。~^〜^~ (2020年9月24日 16時) (
レス) id: 000505beae (このIDを非表示/違反報告)
星舞__(*´ `*) - これ読んでる時号泣しました……こういう作品私めっちゃ好きなんですよー！更新頑張ってください！ (2020年9月23日 16時) (レス) id: 5f2a936d4a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：五千時 x他2人 | 作成日時：2020年8月14日 10時
