十七匹目 ページ17
鬱もまた、少しだけ大人びていた。
身長も、顔立ちも、高校の時とは少し違って垢抜けていた。
立派な男性だった。
それが何故か、嬉しくもあって悲しくもあって。
いつから、鬱に対してこんなに沢山のことを思うようになったのだろう。
『覚えてないかな、私、高校の卒業式の日に、友達よりも鬱と離れるのが嫌で嫌で、大号泣しちゃって』
仲の良い友達が泣いていても、慰める役だった私が、友人の「鬱島君ともお別れだね」なんて、そんな一言ではっと気づかされ、声を上げて泣いた。
あの鬱でさえも泣いていたくらいだから、私の泣きっぷりは相当なものだったのだろう。
『ずっと一緒だと思ってたの、鬱にだけだよ、こんなこと思ったの、恋愛感情とか、そういうのとは少し違うんだけど、特別な何か、絆みたいなのが、私と鬱にはある気がするの』
自惚れかもしれない。
けれど、鬱といた時は、どんな時でも心が安らいだ。
彼の人を惹きつける魅力に、私が惹かれたのならそれまでなのだが、それ以上に、何か互いに思うことがあったような気がするのだ。
『…なんて言ったらいいのかな、特別としか言いようがなくて、そう言えば、猿山先生とも凄く仲が良かったよね、私、あの時何だか、嬉しくて…わからないけど、初めて二人が話してる姿見た時、泣いちゃったよね』
トントン君や、猿山先生もそうだ。
初めて会った時、トントン君は私の癖とかにすぐ気付いて、不思議と会話は途切れなかった。
猿山先生は、鬱と仲良さげに話している姿を見て、何故か分からないが、嬉しかった、涙が出てしまうくらいに。
卒業式の日には、鬱と同じくらい離れ難くて、長話しちゃってたっけ。
『本当は、ずっと前から変だって思ってたんだよ、だって、みんなといると、家族と同じくらい安心しちゃうんだもん』
鬱に語りかけている口が、止まった。
まるで、弁明しているように思えたからだ。
そんなつもりはない、だけど、そんな風にしか思えない。
それに、自分は誰に対して弁明しているのか、見当もつかなかった。
『…鬱、私、どうしてさ、』
初めて会った時、聞いてもいないのになんで、鬱の名前が分かったんだろうね。
それを、どうして今まで疑問に思わなかったのかな。
ねえ、鬱、一度だけ、私のこと、母さんって呼び間違えたことあったよね。
あの時、どうして、言い間違えたって言わなかったの。
どうして、悲しそうに私を見たの。
ねえ、どうして。
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うっちゃん - 私もこういうの好きです。~^〜^~ (2020年9月24日 16時) (
レス) id: 000505beae (このIDを非表示/違反報告)
星舞__(*´ `*) - これ読んでる時号泣しました……こういう作品私めっちゃ好きなんですよー！更新頑張ってください！ (2020年9月23日 16時) (レス) id: 5f2a936d4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：五千時 x他2人 | 作成日時：2020年8月14日 10時
