十一匹目 ページ11
『___猿山先生！』
彼の名を呼びながら伸ばした手は、先程とは違う、部屋らしき空間を背に、無意味に存在するだけだった。
身体を起こして、周りを見渡しても、洋風な部屋のベッドの上にいると言うことしかわからなかった。
ここは何処だろう、それに、夢に出てきたのは、高校でお世話になった猿山らだ男先生だった。
確かに、鬱と仲が良かったし、知り合いなのも肯ける。
でも、着ていた服は古風だったし、ここ数年会っていないのに、まるで全て知っているかのような口調だった。
…もう、訳がわからない。
膝を抱えようとした時、違和感に気付いた。
『っ、…なに、この服…』
着ていたのは白の着物。
何重にも重ねてあり、ずっしりとしていて動きにくい。
せめて走れるくらいには、と服を脱いでいき、二枚ほど残して、それ以外はベッドの上に放った。
…誰が着替えさせたんだろう、ゾムさんかな。
だとしたら変態だ、文句の一つや二つ言ってやりたい。
『…逃げろって、言ってた…』
そう言えば、よく教室で遅くまで残っては、猿山先生に早く帰れって怒られたっけ。
飼育小屋の草刈りを一人でしてて、手伝ったらいつも内緒でジュースを奢ってくれた。
優しくて、格好良くて、皆から愛される、そんな人だった。
…だから、あんなに怒りをあらわにしている姿は見たことがなかった。
『…逃げれないよ、みんなを置いて…』
心の中で親切な忠告を無視することに謝罪しながら、部屋の扉を開けた。
埃っぽい、掃除はまともにされていないようだ。
廊下に出て、外を見れば、地面が少し遠かった。
それに、見慣れた不気味な森。
…ここは、もしかしてあの洋館じゃないだろうか。
皆の元を飛び出してしまったけど、今、皆何処にいるんだろう。
この洋館に辿り着いたのだろうか。
それとも、私の後を追って神社に…いや、森の中で迷っていたりして…。
…まさか、もう、ゾムさんの手で…。
『いやいやいや、あんな武装してたし、そんな簡単に…』
どれだけ武装していても、軍人でも警察でもないのに、そんな簡単に、何人も殺したであろう人物に立ち向かうことなんて、できるのだろうか。
私、今更だけど、相当皆の足を引っ張ってしまったのではないだろうか。
どうして、あの時あんなにも焦ったのか、皆と一緒に行動していれば、こんなことには…。
『…探さなきゃ、ゾムさんでも、皆でも、どちらでもいいから、見つけないと…』
長い廊下を駆け出した。
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うっちゃん - 私もこういうの好きです。~^〜^~ (2020年9月24日 16時) (
レス) id: 000505beae (このIDを非表示/違反報告)
星舞__(*´ `*) - これ読んでる時号泣しました……こういう作品私めっちゃ好きなんですよー！更新頑張ってください！ (2020年9月23日 16時) (レス) id: 5f2a936d4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：五千時 x他2人 | 作成日時：2020年8月14日 10時
