二匹目 ページ2
『っは…！』
飛び起きれば、荒い呼吸と共に、頬から首れ汗が伝う。
べっしょりと濡れた服の感触は気持ち悪くて、夢見の悪さのせいか頭も痛い。
ゆっくりとベッドに座り直し、深呼吸をして自分を落ち着かせる。
『…何で、よりによって今日、あんな夢…』
日付を見れば、ちょうど、夢で見たあの日と同じ。
もう、十三年も前のことだが。
あの日、いつの間にか森の入り口に立っていた私が見たのは、驚いたような顔をする村の大人達と、泣き崩れる、葵ちゃんの母親。
あの森で、葵ちゃんは迷ってしまったらしく、そのままずっと行方不明だった。
あの森はとても迷いやすく、警察も入ることができないので、一度行方不明になってしまえば、自らの力で出てくる他なく、その可能性は、私を除けばゼロで。
つまり、もう、あの子は帰らぬ人となってしまった。
『……怒ってるのかな、葵ちゃん』
自嘲気味に言ってみたら、案外胸をえぐるには十分すぎたので、その思考は捨て去った。
今日、十三度目の墓参りに行く。
あの子を一人残して、勝手に森から出てしまったことを、今でも後悔している。
あの時、手を離さず、ずっと隣に立って居れば、せめて一人で寂しく死なせてしまうことはなかったのに。
『なーんて…』
そんなこと考えても無駄なのは分かっている。
あの子は優しいから、きっと怒っていたとしても少しだ、態々あんな風に夢で脅すようなことはしない。
…思い込みに過ぎないが、そうとでも思っていなきゃ、辛くて涙が堪えられない。
あの日とは違い、今年の今日という日は梅雨が明けてカラッとした天気だった。
陽が肌をチリチリと焼き、暑さが体を巡っていく。
葵ちゃんには申し訳ないが、早く済ませて、アイスでも食べよう。
「あれ、Aやん」
『え、あ、嘘…桃瀬君？』
「あの時みたいにトントンでええのに」
『いや、小学校以来だから…凄い、背伸びたね、男らしくなって…』
「親戚のおばちゃんみたいなこと言うんやな、そう言うAも、大人っぽくなったな、女性らしいわ」
『わ、わぁ…トントン君、格好良くなったから、そんなこと言われるのは恥ずかしい…』
「え、ぃや、照れんとってや、俺かてこんなこと言い慣れてへんし、格好良いとか、全然言われへんし…」
小学校が一緒だった桃瀬君ことトントン君。
彼の背はあの時と比べられないほどグンッと伸びていて、私が背伸びしても届きそうになかった。
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うっちゃん - 私もこういうの好きです。~^〜^~ (2020年9月24日 16時) (
レス) id: 000505beae (このIDを非表示/違反報告)
星舞__(*´ `*) - これ読んでる時号泣しました……こういう作品私めっちゃ好きなんですよー！更新頑張ってください！ (2020年9月23日 16時) (レス) id: 5f2a936d4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：五千時 x他2人 | 作成日時：2020年8月14日 10時
