一匹目 ページ1
立ち入り禁止の森の看板があった。
私が生まれるより、ずっと前から。
蜘蛛神様の巣であるこの森に入ると、生贄だと勘違いされて喰われてしまうからだ。
もう、何人も居なくなってしまった。
私の両親も、祖父も、生贄として送られたらしく、祖母と二人きりの生活だった。
「蜘蛛神様はね、神様でありながらも邪悪な方なんだよ、神様にはお供えをするだろう？他の神様と違って、蜘蛛神様は生贄しか受け取ってくださらないんだ」
『なら、どうしてあんなに沢山の食べ物もあげちゃうの？』
「蜘蛛神様に魅入られた子がいるんだよ、その子が生きていく為さ」
『蜘蛛神様と一緒に生きてる人がいるの？』
「ああ、そうさ」
ずっと、ずっと昔からいる蜘蛛神様。
その言い伝えも、同じくらいずっと前からあるらしく、そんな長い間生きているその子は、最早人間とは呼べないのでは、なんて子供ながらに考えたのを覚えている。
『ねえ、葵ちゃん、本当に行くの？』
「うん、だって、こんな看板昨日までなかったし、きっともう大丈夫ってことなんだよ！」
『そう、なのかな…？』
「そうだよ！ほら、暗くなる前に行こうよ！」
正直、その時私はそんな言い伝えを信じていなかった。
森で迷って行方不明になった人がいるのは本当かもしれないが、迷いやすい森の危険から私達を遠ざけるためについた嘘だと思っていた。
それに、その日、確かに蜘蛛神神社と書かれた看板と、見慣れない道があったのだ。
勝手に入ったら村の人に怒られると分かっていたが、好奇心の方が勝ったのだ。
「…ねえ、Aちゃん、あれ、何だろ」
『わかんないけど…お屋敷ってやつかな？』
「ええ！凄くない！？大発見だよお！」
着いたのは神社なんかじゃなくて、大きなお屋敷だった。
不思議に思った私は、つい、葵ちゃんの手を離して、森の中を探した。
適当に歩いていたはずなのに、いつの間にか私は階段を上り、鳥居を潜り、神社についていた。
蜘蛛の巣で埋め尽くされた、真っ黒な神社に。
「A…？Aやんな、ああ、やっと会えた！」
『…お兄さん、誰？』
「えっ、あ、ああ、お兄さんはな、__って言うねん」
『__さん？』
「呼び捨てでええんやで、将来、Aと俺は___になるんやから」
『___ってなに？』
「大人になったらまた来てや、その時に、ちゃんと伝えるから、今は、その、な？まだ心の準備ができてへんから、今日はもう帰り」
その後森から出てきたのは、私だけだった。
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うっちゃん - 私もこういうの好きです。~^〜^~ (2020年9月24日 16時) (
レス) id: 000505beae (このIDを非表示/違反報告)
星舞__(*´ `*) - これ読んでる時号泣しました……こういう作品私めっちゃ好きなんですよー！更新頑張ってください！ (2020年9月23日 16時) (レス) id: 5f2a936d4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：五千時 x他2人 | 作成日時：2020年8月14日 10時
