永遠の灰被り ページ6
満月が綺麗な夜だった。
月が綺麗だと、誰かに伝えるには酷く理想的だと思った。
だから、淡い期待を胸に、待っていた。
終焉を告げる、兎の足音を。
「___A」
『…お久しぶりです、お兄様』
震える声で名を呼ばれ、胸が踊った。
嗚呼、愛しい兎の彼が、また私の目の前に。
『いえ、ぴくと様、貴方を一人の男性として意識していることを、こうやって顕にして話すのは、これが初めてでしょうか』
「っ…！」
もう兄とは呼ばない。
恋心を向ける、一人の異性として、その名を呼ばせて貰おう。
そして、私を見捨てた憎き相手として。
『やはり私達は兄妹ですね、アリスに嘘をついて、喜劇だけを望む思考回路は同じだったわけです』
「…違う、違うんだよ、あの時、僕は」
『ならば、何故アリスに言わなかったんです』
「そ、れは…」
私が義兄であるトントンとグルッペンの叔父叔母に預けられる日、唯一の肉親である彼に、二つの選択があった。
引き止めるか、引き渡すか。
そう、彼は、自ら後者を選んだのだ。
私を、この狂気の悲劇に突き落としたのは、紛れもない、彼自身だ。
『ええ、ええ、仕方のないことです、実の妹に向けられた恋心など、受け止められません、私だってそのくらいは分かっていました』
「違うんだって！A、僕は最初から迎えに行くつもりで…」
『随分と都合がよろしいのですね、勘違いなさっているようなので言っておきますが、私はあの時、依存していただけで誰のことも愛せなくなったんです』
だから、幼馴染みの彼らを殺してしまおうと考えた。
そしたら、私は自由になれると思った。
泡のように、消えるように、誰の目にも届かぬ場所に逃げてしまえればいいと。
でも、逃亡を自由ととらえる時点で、私の世界は鎖で絡まってしまっているのだと悟った。
泣き崩れた私を、彼が抱きしめた時に、確信した。
『この際だからはっきり言いましょう、貴方を愛していたんです、一線を超えてしまいたいも思った、でも、貴方はそれを受け入れようとしなかった、だから彼らに依存したんです、そこに愛なんてなくて、可哀想な自分が存在することで、唯一の存在である貴方を愛していることを肯定しようとしたんです』
絶句する彼の左胸に、まだ汚れていないナイフを向けた。
『月が、綺麗ですね』
貴方はきっと、私の為に死んではくれない。
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五千時(プロフ) - リンネくんさん» コメントありがとうございます！そしてご愛読ありがとうございました！次回作にご期待ください！ (2020年8月12日 21時) (
レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
五千時(プロフ) - 馬鹿の者さん» コメントありがとうございます！いやあ、いつも嬉しい言葉をかけてくださって…結婚しちゃいますか！((殴次回作もよろしくお願いします〜！ (2020年8月12日 21時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
リンネくん - 完結おめでとうございます！！！なんか凄かったです(語彙力)次回作楽しみにしてます！！！ (2020年8月12日 20時) (レス) id: ff52703082 (このIDを非表示/違反報告)
馬鹿の者 - 小説の中に入りたい()毎度毎度、よく話が思い浮かびますね？凄いですよね？神ですね？結婚します？((殴 (2020年8月10日 11時) (レス) id: 5afbb2e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
五千時(プロフ) - 糸さん» コメントありがとうございます！更新頻度遅くて申し訳ないです…そろそろ終盤なので最後までご愛読よろしくお願いします！ (2020年8月8日 19時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：五千時 x他1人 | 作成日時：2020年8月1日 0時
