灰被りの謎 ページ4
偶に、何もかもが分からなくなる。
諦める理由も、逃げ出さないと決めつける理由も、毎日募る不安感も。
どうして、そんなことを考えるのかも。
『花を踏みつけていたくせに、硝子の靴を捨てるなんて、いい御身分だわ』
「またそんなこと言って、自分を責めるのは悪い子のすることやで」
『…悪い子よ、昔も、今も』
背中に感じる体温が、ここまで冷たいのはどうしてだろう。
それに伴って、どうしようもなく暖かいのはどうしてだろう。
義兄と手を結んで私を檻に連れ戻したこの嘘つき神父なんか、大嫌いなのに。
『ねえ、オスマン』
「んー？」
『…どうしようもなく、何もかもわからない時があるの、これって、私が可笑しいってことなの？』
「ちゃうよ、ただ、整理がつけられとらんのや」
『整理？』
「そう、Aがしたいこと、それを受け入れるA自身の心の整理」
心臓を突くように当てられた指先に意識が向き、自然と自分の鼓動に耳を澄ます。
私が、したいこと…。
考えた瞬間、吐き気がした。
頭が痛い、心臓が跳ねて、身体の奥底が湧き上がるように熱い。
「ほら、受け入れられへん、だから、身体が勝手に拒絶するんや、本当の気持ちを知るのを、Aは嫌がる」
『っ、ぅ、あ…』
「苦しいやろ、楽になりたいと思わへん？」
『…っは、た、す…け…』
「んふ、ええよ、助けたる、可愛い嫁さんのご要望とあらばな」
_____オスマンは教えてくれた。
優しい声で、でも、鷲掴むように心の奥底にしまっていたものを引っ張り出した。
全てを理解した瞬間、あまりにも腑に落ち過ぎて、とても受け止めきれなかった。
でも、オスマンが、悪いことじゃないって言ってくれた。
だから、きっとそうなのだろう。
「Aは悪くないで、全ては、君のことをお構いなしに振り回した兎のせいや」
『う、さぎ…？』
「そう、Aの好奇心を煽るような言葉をかけて、外の世界に誘ったのは紛れもない、君の大好きだった兎やろ？」
『……どうすれば、いいの』
「断ち切るんや、自分の意思でな」
身体の力が抜けて、俯いてその光景を想像する。
夢でも見ているかのようだ、だって、こんなこと考えたこともなかった。
「もう大丈夫、おやすみ、A」
伸ばした手は空を切って、最後に、心地よく落ちていく感覚が襲った。
ああ、やっと、この悪夢から覚める。
「おはよう、永遠の灰被り」
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五千時(プロフ) - リンネくんさん» コメントありがとうございます！そしてご愛読ありがとうございました！次回作にご期待ください！ (2020年8月12日 21時) (
レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
五千時(プロフ) - 馬鹿の者さん» コメントありがとうございます！いやあ、いつも嬉しい言葉をかけてくださって…結婚しちゃいますか！((殴次回作もよろしくお願いします〜！ (2020年8月12日 21時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
リンネくん - 完結おめでとうございます！！！なんか凄かったです(語彙力)次回作楽しみにしてます！！！ (2020年8月12日 20時) (レス) id: ff52703082 (このIDを非表示/違反報告)
馬鹿の者 - 小説の中に入りたい()毎度毎度、よく話が思い浮かびますね？凄いですよね？神ですね？結婚します？((殴 (2020年8月10日 11時) (レス) id: 5afbb2e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
五千時(プロフ) - 糸さん» コメントありがとうございます！更新頻度遅くて申し訳ないです…そろそろ終盤なので最後までご愛読よろしくお願いします！ (2020年8月8日 19時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：五千時 x他1人 | 作成日時：2020年8月1日 0時
