灰被りの目覚め ページ1
目が覚めれば、同じ現実。
最後に一目、見たかった、謝りたかったけれど。
アリスが私の背中を押したから、振り返ってはいけないと思った。
…硝子の靴を脱いだ時、解放された気分だった。
草を踏んだあの感触が、また、戻ってきたようで、何も知らない無垢な自分に戻れた気がしたのだ。
…馬鹿みたいだ、もう、汚れきってるくせに。
「良い夢は見れたか？」
「ぐっすりやったな」
『…分からないわ、良い夢のようで、悪夢でもあった』
「そか、慰めたろうか」
「おいで、A」
逃げようと言われた時、どうして困ってしまったのだろう。
ねえアリス、教えてよ。
あの夜のように、私のことをどうか見透かして。
だって可笑しいじゃない。
貴女の手を取ることはできないのに、彼らの手を取ることは容易いのよ。
「綺麗だな、Aは」
『変なことを言うのね、私がどれだけ汚れているか、知ってるくせに』
「泥だらけの少年の無邪気な笑顔を、汚いと思わないのと同じだ」
『…結局、汚れてるじゃない』
「ははっ、確かに、残念やったなグルさん、その慰め言葉はAに響かんかったみたいやで」
「本当に、残念だ」
この二人は変わらない。
ずっと、歪んだままの愛情を注いで、それから離れられないのを知っていて、離そうとしない。
…それもそうか、当たり前のことだった。
彼らが、兄からの逃げ場だった。
つまり、私は今も、愛しき兄を待ちながら逃げている。
こんな穢れた私を見て、顔を歪める兄を、見たくはない。
「花を植えようか」
『どうして？』
「花畑を作るんだ、そこで、上書きすれば良い」
「上書きじゃのうて、グルさんの場合洗脳やろ」
「何てこと言うんだ、俺はAが少しでも心地良く過ごせるようにだな」
「はいはい」
こんな矛盾があっていいのだろうか。
『駄目よ、絶対に』
「何で？花畑大好きやったやん」
『…あの場所は、…あの場所でしか存在を許されないの』
兄との思い出を、消してしまうなんて耐えられない。
私の罪の記憶であり、唯一の純粋な記憶。
兄を兄として慕っていた、大切な場所。
それを、再現でも偽善でも、こんな狂気の場所に作り出すなんてことは、したくなかった。
…アリス、貴女は全てを知っているようで、大切なことを知らないの。
だから、貴女の手を取ることはできないの。
『…いっそのこと、殺してよ』
幼い頃の私が、したように。
いつかの私が、しようとしたように。
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五千時(プロフ) - リンネくんさん» コメントありがとうございます！そしてご愛読ありがとうございました！次回作にご期待ください！ (2020年8月12日 21時) (
レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
五千時(プロフ) - 馬鹿の者さん» コメントありがとうございます！いやあ、いつも嬉しい言葉をかけてくださって…結婚しちゃいますか！((殴次回作もよろしくお願いします〜！ (2020年8月12日 21時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
リンネくん - 完結おめでとうございます！！！なんか凄かったです(語彙力)次回作楽しみにしてます！！！ (2020年8月12日 20時) (レス) id: ff52703082 (このIDを非表示/違反報告)
馬鹿の者 - 小説の中に入りたい()毎度毎度、よく話が思い浮かびますね？凄いですよね？神ですね？結婚します？((殴 (2020年8月10日 11時) (レス) id: 5afbb2e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
五千時(プロフ) - 糸さん» コメントありがとうございます！更新頻度遅くて申し訳ないです…そろそろ終盤なので最後までご愛読よろしくお願いします！ (2020年8月8日 19時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：五千時 x他1人 | 作成日時：2020年8月1日 0時
