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彼女達が恐れているのは、私が死ぬこと、なのだろうか。
だとしても、私が記憶を思い出すことが、死に直結するわけでもないと思うのだが。
それなのに、彼女達は何故あそこまで、私が記憶を思い出すことを阻止しようとするのだろう。
『…美味しい』
「沢山練習しましたから」
『オスマン様の為に？』
「あの方は私が淹れるより、ご自身で淹れる方が何倍も美味しいですから、まあ、あの方の婚約者である身ですから、周りの方に恥じないように、とは思ってましたけど」
『なら、趣味でここまで？』
「…貴女のためですよ、A様」
柔らかい笑みだった。
でも、微かに指は震えて、緊張しているのが分かった。
オスマン様の婚約者とはいえ、完全に自分を隠し切れるわけじゃない。
だから、痛む右腕を、庇うこともせず、バレないようにと無理に使うから。
「ああ、そう言えば、美味しいお菓子を頂いたんです、良ければ食べませんか、私持ってきます」
『…いいわ』
「…気分じゃ、無かったですか」
『そんなボロボロの体を、無理に動かしたら崩れてしまうでしょう、座って』
「私は大丈夫ですよ、この通り元気です、怪我なんて何処にも」
『貴女は嘘をつくのが下手なのね』
「え」
『…座って、お願いだから、もう無理しないで』
懇願するには弱々しい声でそう言うが、彼女は戸棚まで歩くと、今度は痛みを露わにしながら、クッキーの入った箱を持って来て、置いた。
そして、何もないと言うように、また笑った。
［…緑、クッキー食べる？］
「ごめん、お腹空いてないの」
［でも、お昼も食べてなかったじゃん…最近、緑痩せすぎだよ…少しでも何か食べないと…］
［大丈夫、ちょっと体重増えちゃってたから、甘い物好きだと困るね、すぐ太っちゃうから…］
［っ、千里に言われたんでしょ、緑は十分細いよ…細すぎる…］
［何言ってるの、違うって…あ、もう時間だから、行かなきゃ］
［…行かないで］
［え？］
［そんなふらふらな体でどこに行くの…また、あいつのとこ行くの？］
［私は大丈夫だから］
［…嘘つくの、下手すぎ］
［…］
［お願いだから、もう…このままじゃ、緑、死んじゃうよ…］
そう言えば、こっちの世界で、彼女がお菓子を作っている姿は見たけど、食べている姿は見なかった。
『…緑は、甘い物大好きだから、いつも幸せそうな顔で食べてた』
名前を呼ばれ、青ざめた彼女の細すぎる腕を握った。
『…生きよう、一緒に』
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書籍姫 - 控えめに言って泣いた。好き。 (5月24日 14時) (
レス) @page28 id: e3ea7725f8 (このIDを非表示/違反報告)
セエレ(プロフ) - こんな神作がホイホイ見つかるもんだからこの界隈はやめられねえ… (5月24日 2時) (レス) id: b81e176fb0 (このIDを非表示/違反報告)
セエレ(プロフ) - 完結おめでとうございます！思ってたのと360°くらい違ったのにお気に入り小説のBest3に入るくらいの神作でしたよ…もう一度で二度どころか十度くらい美味しかったです…ご馳走様でした…書籍化して良いと思うこの小説. (5月24日 2時) (レス) id: b81e176fb0 (このIDを非表示/違反報告)
なな - コメント失礼します！想像を斜め上行く神作でした！！他の作品も見てみますね！！ (2022年12月14日 19時) (レス) @page27 id: 7cadbb1f0e (このIDを非表示/違反報告)
ぽぺに(プロフ) - 神作品です！大好き！ちょっとメリバちっくな所大好きです！ (2022年7月10日 10時) (レス) @page27 id: bcadc0cb73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：五千時 x他1人 | 作成日時：2020年4月19日 13時
