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「…アリス、残念だが」
「嘘よ、嘘、だって、確かにあの日、彼は私を愛してると言ったのよ！結婚しようって、キスまでしたのよ！なのに、それなのに、こんなこと…！」
取り乱した姉を落ち着かせようと手を伸ばしたが、無残にも、払い除けられた。
お母様が、お姉様の名前を呼び止めるように怒っている。
大好きな姉に向けられたその憎悪の瞳が、私には酷く応えた。
「ああ、貴女奪ったのね！私の為にと思わせて、裏で何か手を回したのでしょう！」
「アリス、なんて事を言うの！」
「私がどれだけの恥をかいたかわかってるの！キスまでして、もう私は穢れを知ったのに、愛を知ったのに、貴女のせいで全て台無しよ！」
「やめないかアリス！」
「離して！この子を追い出して！」
髪は振り回しすぎてぐちゃぐちゃで、いつもは優しく微笑みを向けてくれたその顔は恐ろしく、鬼のように怒りでしわくちゃで、服も、溢れた紅茶によって汚れてしまっていた。
私は、恐怖を覚えた。
幸せが壊れたこの瞬間、人の最大の幸福を壊していたのだと気づいたこの瞬間、漸く、自分が本当に悪者として生まれ変わったのだと気付かされた。
「我々国なんて、軍国じゃない！嫁がなければこの国も終わり、貴女に選択肢なんてないわ！手を出したのが軍国だなんて、馬鹿な子！軍国に嫁いで、何もなく幸せになれるだなんて思わないことね！」
「っ、おい、誰か！アリスを部屋から出してくれ！」
「ざまぁみなさい！きっと、毎日こき使われて、灰を被っていても誰も助けてくれないわ！他国から弱みとして狙われて、それでも無駄な命として扱われて、貴女が生きることを誰にも望まれずに生きていくのよ！天罰よ！天罰！」
部屋の前で待機していた兵士二人が、姉を取り押さえて部屋から出て行った。
唖然と、まだ耳に残る姉の声に、涙が溢れた。
あんな憎しみを向けられたのは、初めてだった。
恐ろしい、恐怖でどうにかなってしまいそうだった。
ここにいては、姉に殺される。
あの憎悪の目を、毎日浴びせられる。
「A、お前は何も悪くない、偶々グルッペン総統に気に入られただけなんだ」
「そうよ、アリスも、少し神経質になっているのよ、きっとあんなこと、本当は思ってもいないわ、だから、断っていいのよ」
私の涙を拭い、抱き締めてくれる両親。
前まで、姉からも、この優しい温もりを感じていたのに。
今、この優しさが、とてつもなく恐ろしかった。
『…私、我々国へ、行きます』
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五千時(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます！凄く嬉しいです！励みになります〜！更新頑張ります！！ (2020年4月16日 19時) (
レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - このお話最高です！推理要素もあってとても楽しめます。今ある話まで一気読みしちゃいました笑更新頑張ってください！！ (2020年4月16日 18時) (レス) id: abc489c33a (このIDを非表示/違反報告)
五千時(プロフ) - Black Aliceさん» コメントありがとうございます！夢主以外の視点も書きます！近々その話が出ると思いますのでお待ち下さい！ (2020年4月13日 19時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
Black Alice(プロフ) - とても面白い小説に巡り会えたと心から思える程、面白かったです!1つ質問なのですが、夢主以外の視点は書いたりしますか？ (2020年4月13日 18時) (レス) id: 10501c80b3 (このIDを非表示/違反報告)
五千時(プロフ) - ゆうさん» コメントありがとうございます！いやぁぴくとさん黒幕で使うの夢だった…！更新頑張ります！ (2020年4月12日 22時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：五千時 | 作成日時：2020年3月30日 22時
