眠れない夜に必要なもの ２（∞）

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部屋に帰り着いてすぐ、約束通りヤスに電話をかけた。


「もしもしぃ？ウチ着いた？」


あたしからの電話を待っていてくれたのだろうか、

ほぼノーコールの勢いで電話に出たヤス口調は、いつもより少し早口に感じた。


「…うん、今着いた。」


「ーーA？
まだ具合い悪いん？」


ヤスは、他人の声色や顔色にやたらと敏感だ。

だから、ほら、すぐに気付かれてしまう。



「大丈夫。

ただ…何かよく分からないんだけど、大倉のこと怒らせた、カモ…？」


まだ整理のつかない頭の中をぐるぐると巡るのは、つい先程の大倉とのやりとり。


「何かあったん？」


声を抑えて心配そうに聞いてくれるヤスに、この状況の整理と解決を頼ってみてもいいのだろうか…









「ーーありがとう。

あ、大通りまで出るとタクシー捕まえやすいから…」


宣言通りエントランス前までついて来てくれた大倉だったけれど、

不機嫌な空気を纏ったままの大倉と、無言で歩く数百メートルの体感の長かったことよ…


頭の中では、

(あたし何かした？
そんなムッツリさせるほどの事、した？！)

という疑問と不満を抱えつつも、

送ってもらった立場だし、もう家に着いたし…

と、当たり障りのない言葉で大倉を見送ろうとした。



しかし…



「日曜日、暇やろ？」


ーーやっと口を開いたかと思えば、いきなり何だその言い草は。


やけに尊大なその言い方にカチンときつつ、まぁ、大倉って基本的にこういうヤツだしな、と心を宥め、


「暇じゃない。
横山くんと約束してるから。」


と答えると、


「ハァ？何で横山くんと？！」


ますます機嫌の悪い声が返ってきた。


いや、あたしが誰と約束しようが勝手じゃない？

なんでそんなキレた顔してるのよ？

この男、本気で世界は自分中心に回っていると思っているのか？！


と、そろそろ大倉の言動に本格的に苛立ちはじめたところで、


「俺も行く。」


と親に留守番を言い渡された小学生のような台詞が聞こえてきた。


「ーーいやいや、遊びに行くんじゃないから。
横山くんが通ってるボクササイズのジムの体験に行くのよ。」


流石に呆れて、もはや子供を諭す親の気持ちで説明するも、


「うっわ…横山くんヤラシイわ。」


…どうやら話が通じないらしい。


ジムを紹介してくれた善意の横山くんが、何故こんな言われよう？

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