・ ページ41
「あっ、ごめん、ちょっと出るね？」
そう告げると、大倉は素直に握っていたあたしの手を離してくれたものの、
「もしもし？」
「もしもしぃ？ウチ着いた？」
スマホから漏れ聞こえた声で電話の向こうの相手を察したのだろう、
「ヤス？」
いきなりスマホに耳を寄せるように顔を近づけてきた。
「ちょっ、大倉、何？！離れてよっ」
慌ててその顔を押し除けると、
「痛っ、そこニキビ出来てるから触らんといてよっ」
でっかい声で耳元で文句を言う大倉と、
「えっ？大倉？！
何でまだ一緒におるん？」
スマホからもヤスの驚いたような声が響いてくるし、
あー、もう、うるさい…
「ヤス？ごめん、ちょっと気持ち悪くて歩いて帰ってるから、まだ家に着いてないの。」
「えっ、大丈夫なん？飲み過ぎた？
帰る時、ちょっと大人しかったもんなぁ。
気付いてあげられへんくてごめんな…」
とりあえず大倉は放っておいてヤスに状況を説明すれば、何も悪くないのに申し訳なさそうにそんな事を言ってくれちゃうから、
やっぱりヤスは可愛さと癒しの塊だ。
「もうほとんど治ったから平気。
もうすぐ家に着くし、大倉も付き合ってくれてるし。
だからもう今日は電話くれなくて大丈夫だよ？」
「ーーそっか…
あ、でも明日のことも決めたいから、家着いたら電話もらってもええ？」
「あ、そうだね。
じゃあまた家着いたら電話する。」
「おん、じゃあ、ば〜いばい。」
いつもながらの甘ったるい��ばいばい��を受け取って電話を切れば、
不機嫌を全面に貼り付けた男がこちらを見下ろしていた。
「ごめんね、お待たせしました。
ヤスっていつも飲んだ後、家に着いたか確認の電話くれるの。ほんと、優しさの塊だよね〜」
送ってもらっているのに、短時間とは言え放置したのは失礼だったな、
と反省して素直に謝ってみたが、
「ーー明日、ヤスと約束してるん？」
ヤスの言葉が漏れ聞こえたのか、大倉は相変わらず不機嫌な声で聞いてきた。
「え？うん、映画観に行く。」
それがどうした？と思いつつ答えると、
「…よく二人で出掛けたりするん？」
やっぱり不機嫌な声が返ってくる。
何なんだ、本当に。
「まぁ、ちょこちょこ。
あ、もうここでいいよ。ありがとね。」
大倉の放つ謎の圧からさっさと逃れたくて、自宅マンションが見えて来たところでそう言ってみるが、
「エントランスまで送る。」
また不機嫌な声で返された。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 821人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さくらもち - 更新されていた当時からこっそり読ませて頂いていました。久しぶりに読んでみて、やっぱりまめまめたさんの作る世界が大好きで、ずっと1番です。もうここにはいらっしゃらないかもしれませんが、どうか届きますように。 (3月7日 2時) (
レス) id: 5f7a39fac4 (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさん☆今回も最後までお付き合いありがとうございます！こんな贅沢な眠れない夜なら大歓迎ですよね(//∇//)続き、やっぱり気になります？今妄想中のお話が書けたら、続編頑張ってみようかなぁ… (2021年6月4日 19時) (レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - 飲みの帰りに大倉くんに焼きモチ焼かれて、安田くんに１日一人占め宣言されて、横山くんがゲロ甘…。こんな夜過ごしたらバチ当たるよね！バチ当たりたい！！続編、何卒m(__)m (2021年6月4日 2時) (レス) id: d5063d2f63 (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさん☆新しいアルバムの特典とかにどうですか？！笑 お願いします、インフィニティさん（^人^） (2021年1月25日 13時) (レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - え…この乙女ゲーム、どこでダウンロードできますか？(笑) (2021年1月23日 2時) (レス) id: a475b78d7e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめまめた
| 作成日時：2020年9月9日 13時
