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図書館[2]3 ページ24

光が漏れている所に最も近い本棚からそっと覗き込むと、大柄な男が此方に背を向けて跪いているのが見えた。

男は小声でブツブツと何かを言っているが、他に誰かいるのだろうか。

そう思った瞬間、男は立ち上がって此方を向いた。

男が持ったライトの光が私の顔面を掠める。

突然のことだったので此方の反応が少し遅れてしまったのだ。

「だ、誰かそこにいるのか?!」

流石にこのままやり過ごすことは出来ない。

私は意を決して彼と対峙した。

「ここは関係者以外立ち入り禁止だ。な、何なんだ君は?!」

男はあくまでも見回り中なのを装ったように声をかけてくる。

しかし、私の格好に対して明らかに困惑しているようだ。

パーティードレスに上着を羽織った姿ならば無理もないか。

そんな彼もパーティースーツ姿なのだから、この場所に似付かわしい格好ではないと思うのだが…

『私はこの大学に通っている学生です。その本、どうするつもりですか?』

私は男が大事そうに抱えている本を指さしながら、いきなり本題をぶつけてみた。

「学生?!…最近の学生は普段着にドレスを着るのが流行とでも言うのか!」

私の服装からか、学生というのを端から信じていないようだ。

そんなこと今はどうでもいい。

『そんなことはどうでもいいでしょう。問題なのは、貴男がその本を持ち出そうとしていることです
。それはここに寄贈、保管されていて持ち出し禁止の筈ですよ。』

「…はっ…!そもそも持ち出し禁止であることがおかいしんだよ。
この本は素質ある者が見るべきものだ!
誰の目にも晒されずに置いておくなんてこの本価値を分かっていないバカな奴がすることだ!」

男は取り繕うことを諦めたようだ。

いきなり饒舌になった。

「俺だって穏便に事を進めたかったんだよ。」

男はじりじりと此方に近付いてくる。

「どさくさに紛れてこの本と共に姿を消そうと思っていたのに…
アンタには顔も見られちまったし、この本についても何か知ってそうだしなぁ…」

やっぱり本はおろか、こんな現場を見てしまった私をこのまま帰すつもりは無いようだ。

「深入りしてきた奴が悪いよなぁ?」

男は私を見てニタリと笑った。

貼り付けたような気持ち悪い笑みだった。

このまま大人しくやられるつもりは到底無い。

私は身構えた。

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紫かぶら(プロフ) - 狐火@リリさん» ありがとうございます。ラストのオチはかなり早い段階で決めていたので、そう仰って頂き嬉しいです。夢主ちゃんは六つ子に振り回される運命なんだと思います。新連載も予定しておりますので、機会があればお付き合い下さいませ。本当にありがとうございました。 (2018年10月9日 1時) (レス) id: fdc73fc447 (このIDを非表示/違反報告)
狐火@リリ(プロフ) - 完結おめでとうございます!!展開がどうなるんだろう?!と楽しみにしてました!!仕事が終わってもずっといる六つ子と夢主ちゃん...ほんわかが続きそうですねw素敵な作品ありがとうございました! (2018年10月8日 22時) (レス) id: f1c0b03c70 (このIDを非表示/違反報告)
狐火@リリ(プロフ) - 紫かぶらさん» いやいや、全然気にしませんよ?!無理しないで紫かぶらさんのペースでふぁいとです!急かす人なんていませんから!ちゃんと読みますよー!更新ファイトです! (2018年4月30日 1時) (レス) id: 7e4f6c9350 (このIDを非表示/違反報告)
紫かぶら(プロフ) - 狐火@リリさん» 長期間更新していなかったにも関わらずこんな優しいコメントありがとうございます。完結に向けて頑張りますので、また読んで頂けたら嬉しいです。 (2018年4月29日 23時) (レス) id: d7e8ff9b83 (このIDを非表示/違反報告)
狐火@リリ(プロフ) - お久しぶりの更新お疲れ様です!待ってました!展開がすごい気になります!こうしんがんばってくださいー! (2018年4月28日 21時) (レス) id: 7e4f6c9350 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紫かぶら | 作成日時:2016年10月7日 1時

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