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第五十二話 最悪な目覚め ページ4

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少しずつ意識が浮上していく。


まだふわふわとした覚束無い感覚がありながらも、確かに覚醒していく脳内。靄がかっていた部分が晴れてきて、それと同時に手を誰かに握られている感触がした。


この温かさを私はよく知っている。幼い頃からずっと一緒だった大好きな幼なじみの手だ。



それと同様に薬品の混じった消毒液のような匂いが鼻腔を掠めた。


直ぐに此処が医務室だと分かって、私はゆっくりと目を開ける。





「…っ……此処は…」



一気にクリアになる視界とその眩しさに思わず目を細めながらも私は周りを見渡した。


幾分か怠く重い体は起きる気さえ削ぎそうだ。




そんな事を思いながらも起き上がると、腹部に形容し難い痛みが走った。


思わず顔を歪め言葉を詰まらせるものの、それと同時に先程の記憶が鮮明に蘇る。




その瞬間、体全体が一瞬にして覆われ眩しかった視界がまた暗闇に戻る。


フワリと香った匂いは私のよく知っているものだ。





「……治…くん…?」



横腹に巻かれた包帯と先程の記憶が繋がって、私はこの状況によく分からないまま声を洩らす。


強く抱き着いてくる治くんはちゃんと傷に触れないよう加減をしていて、そういう変に気遣いの出来る所は治くんらしい。



とはいえ、先程から黙り込んだままずっと抱き着いている為、私も何て話し掛けたら良いのか全く分からない。


基本呼び掛けても応えない時は拗ねている時だし、このまま治くんが喋るまで待つのが得策だろう。



そんな事を思いながら、いつものように治くんの髪を優しく撫でて上げる。


こんな時でも治くん可愛いばかりを脳内で思っているんだから、私はもう手遅れなのかもしれない。



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第五十三話 下手な誤魔化し→←第五十一話 途切れる意識



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葉桜 桜 - 凄く面白いです!1日にリメイク前の物まで読んで、お話が小説の神様みたいです!更新、楽しみに待ってます!! (5月2日 14時) (レス) @page19 id: e6215ef735 (このIDを非表示/違反報告)
わけめ - ついつい一気に読んでしまいました!更新、楽しみに待ってます! (2022年11月19日 23時) (レス) @page19 id: 979aaf8679 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 凄く面白いです! 無理しない程度に頑張ってください! 更新待ってます! (2022年7月14日 15時) (レス) @page19 id: 50f3e04b49 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2021年5月2日 15時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
はーちゃん - いや、神か?????面白かったです! (2020年11月19日 16時) (レス) id: 3ad67a8a12 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年7月21日 17時

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