第四十三話 睡魔に誘われるがまま ページ44
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水の音が反響する。
濡れた髪が糸のように艶めいた輝きを持っていて、自分の髪とはいえ前世とは違ってサラサラな髪に思わず見とれてしまう。
ちゃんと手入れをしているから、髪の綺麗さはちゃんと保たれていた。
ふぅ…と一息吐いた私は、十分に温まった体で浴室から出る。
元々準備していた下着や寝間着を履いた私は、コンセントを入れるとドライヤーのスイッチを入れた。
ブオオオンという独特な音を洩らしながら吹く温かな風を浴びながら、サラサラな髪を乾かし始める。
今日は映画を観に行った反動か、妙に襲い来る眠気に思わず目を瞑りながらドライヤーを浴びていると、思いの外早く乾いた。
ドライヤーのコンセントを取りリビングへの扉を開けた私は、先にお風呂に入ってソファーで寝転がってしまっている治くんを視界に映す。
どうやら本を読んで私が上がるのを待ってくれていたようだけれど、眠いのか目がボーッとしていた。
思わず笑みを溢した私は、そのまま治くんに近寄る。
「治くん、今日は泊まってく?」
「…ん〜」
曖昧に感じる返事だが、それはひどく眠い時の治くんが肯定を表す時の返事の仕方だ。
目を擦っていつもより幼さを醸し出す治くんに可愛いなあと思いながら、その柔らかな髪を撫でて上げる。
ゆるりと顔を上げた治くんが、私をじっと見つめた。
いつもは怜悧で聡明さを宿す瞳が、今は幼い子どものように揺れている。
治くんの頭を撫でていた手をゆっくりと頬に当てて、私は覗き込むように治くんを見た。
「立てる?」
さすがにソファーで寝かせる訳にはいかないからそう問えば、治くんは静かに頷いて立ち上がった。
そしてそのまま歩き寝室に辿り着いた瞬間、私ごと一緒にベッドに雪崩れ込むように倒れる。
どうやら相当眠かったようで完全に寝てしまっているけれど、私の体はガッチリとホールドされていて出られない。
思わず苦笑いを溢しながらも、仕方ないからそのまま治くんと抱き締め合うように私も寝た。
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lokiloki - こちらの作品をとても気に入ったのでプレイリストに載せさせてもらいます ※自分の作品を消したい場合はお手数をかけますがプレイリストの 【おもしろ度を投票】の上にある 【リストから削除】からやるか、プレイリストのコメントから作者に言ってください (11月10日 19時) (レス) id: 7de4ffbd52 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - I am gotさん» コメントありがとうございます!神作だなんて…!!(泣)こんな作者の作品を好いて下さり本当に有難うございます!これからも頑張らせて頂きますね! (2019年7月21日 14時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
I am got(プロフ) - ヤバイ。神作。めっちゃ好きです!!続編楽しみにしてます!! (2019年7月21日 14時) (レス) id: dd6540e082 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - 結月さん» コメントありがとうございます!沢山妄想しちゃって下さい!(笑)更新頑張ります! (2019年7月18日 10時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
結月(プロフ) - 今日も今日とて妄想させて頂いてます!更新待ってます (2019年7月18日 10時) (レス) id: 013547788b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年7月14日 16時