検索窓
今日:15 hit、昨日:13 hit、合計:518,711 hit

第三十六話 数秒間の充電 ページ37

.





映画もついにクライマックスを遂げて終わった頃、治くんと手を繋いで映画館を出る。


沢山の人達がどんどん館内から出てきたせいで、出口までの道のりは多くのお客さん達でごった返していた。





「A〜」



何とも脱力したような声を出す治くんは、私に引っ張られる感じで歩いている。


握られている手は逞しさを感じさせるものなのに、実際は気怠げに歩いていて何だか此方の気分まで落ちてしまいそうだ。



思わず苦笑いを溢しながら出口を通ると、映画のグッズが売ってあるコーナーがこれまた沢山の人で溢れ返っている。


特に買いたいものがあった訳ではなかったから、私はそのまま治くんの手を引いてエレベーターに乗った。


タイミングが良いと云うべきか、現在エレベーターには誰も居ない。




あ、と思った時には時既に遅し。エレベーターに入った瞬間治くんにこれでもかと云う程強い力で抱き締められた。


それも勢いよくだった為、思わず呻き声のようなものを出してしまう。




「うぐっ…!お、治くっ……離し…!…っ…し、死ぬ…!」


「…御免ね。…けど私、ずっと我慢してたのだよ?」



少しだけ緩めてくれたお陰で呼吸は出来るようになったものの、肺が圧迫されている感覚が抜けない。


とはいえ、我慢させてしまったのは確かなので、私は謝罪の意を込めて治くんの頭を優しく撫でて上げる。




「…ごめんね」



眉を下げて謝った私は、治くんからゆっくりと離れた。


エレベーターが一階に着いたのだ。



正直これまた運良く途中から乗ってくる人が居なかったから良かったものの、あれ普通に見られたらめっちゃ気まずいよ。


私は内心安堵の息を吐いた。




.

第三十七話 降り注ぐ雨粒→←第三十五話 苛立ちと不満



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (387 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1213人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

lokiloki - こちらの作品をとても気に入ったのでプレイリストに載せさせてもらいます ※自分の作品を消したい場合はお手数をかけますがプレイリストの 【おもしろ度を投票】の上にある 【リストから削除】からやるか、プレイリストのコメントから作者に言ってください (11月10日 19時) (レス) id: 7de4ffbd52 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - I am gotさん» コメントありがとうございます!神作だなんて…!!(泣)こんな作者の作品を好いて下さり本当に有難うございます!これからも頑張らせて頂きますね! (2019年7月21日 14時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
I am got(プロフ) - ヤバイ。神作。めっちゃ好きです!!続編楽しみにしてます!! (2019年7月21日 14時) (レス) id: dd6540e082 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - 結月さん» コメントありがとうございます!沢山妄想しちゃって下さい!(笑)更新頑張ります! (2019年7月18日 10時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
結月(プロフ) - 今日も今日とて妄想させて頂いてます!更新待ってます (2019年7月18日 10時) (レス) id: 013547788b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年7月14日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。