第二十二話 最悪な目覚め ページ25
.
少しずつ意識が浮上していく。
まだふわふわとした覚束無い感覚が有りながらも、確かに覚醒していく脳内。靄がかっていた部分が晴れてきて、それと同時に手を誰かに握られている感触がした。
この温かさを私はよく知っている。幼い頃からずっと一緒だった大好きな幼なじみの手だ。
「、…っ……此処は…」
一気にクリアになる視界とその眩しさに、思わず目を細める。
幾分か重く怠い体は起きる気さえ削ぎそうだ。
最悪の寝起きとはこの事を言うのだろう。
そんな事を思った直後、体全体が一瞬にして覆われ眩しかった視界がまた暗闇に戻る。
微かに鼻腔を掠めた匂いは私のよく知っているものだ。
「……治くん…?」
不意に蘇る記憶。
消毒液のような薬品の匂いが充満する此処が医務室だと気づくには十分で、私は横腹に巻かれた包帯の存在に気づく。
と言っても服を着ているので、何となく感覚的に巻かれているだろうな、というくらいだけど。
抱き着きながらも傷に触れないよう力加減をしている治くんは、地味に気遣いが出来ている。
とはいえ先程から黙りとしてずっと抱き着いてきている為、私も何て話しかけたら良いのやら全くもって分からない。
黙って抱き着いている時は基本拗ねている時だ。そして治くんは一度拗ねると機嫌を治すのが実に大変なのである。
まあ、拗ねてる治くんも最高に可愛いんだけどね。
「…ねえA、一応言い訳だけ聞いて上げるよ。…どうしてあの場所に居たんだい?」
ああ、今回は拗ねてるなんて生易しいものではない。これはかなり怒ってる。
それによくよく考えてみれば、私が意識を失ってから何時間か経っている筈。
それなのに此処に居るという事は、もしかしてずっと私が起きるのを待っていてくれたのだろうか?
え、何それ嬉しすぎる。と言うか可愛すぎる。
思わず治くん可愛い過ぎる症候群により悶えそうになる衝動を抑え、ついでに緩みそうになる頬も辛うじて抑える。
さすがにこの状況で笑える程私も馬鹿じゃないからね。治くん怒らせるのは私も嫌だし。と言うかスゴく怖いから普通に嫌だよ。
怒った顔も可愛いけどさ。
.
2126人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒猫もふお - 神作品を発見してしまった……これが現実だったらいいのに……… (8月3日 11時) (レス) @page45 id: 9c4f5ea239 (このIDを非表示/違反報告)
梅林 - 物語も面白いし、何より、え、もう太宰さんが可愛すぎてこっちが可笑しくなりそうでした。本当にもう泣きそうなくらい可愛かったです!!これが現実では無いと思うとめっちゃ悔しくなります(;o;) (2020年2月27日 2時) (レス) id: 837f5e2707 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - 真菜さん» コメントありがとうございます!そんな風に思って下さってるなんて…!もう嬉し過ぎて涙が出ます!!(泣)本当に有難うございます!!これからも頑張らせて頂きます!! (2019年7月14日 16時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
真菜(プロフ) - とても面白くて、大袈裟に感じるかもしれませんが、これを楽しみに毎日過ごしてます!リメイク版も楽しみにしているので、自分のペースで頑張ってください!!! (2019年7月14日 16時) (レス) id: ef2b815640 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - 東雲 祀さん» コメントありがとうございます!太宰さん可愛いですよね(笑)。楽しみにして下さって本当に有難うございます!!これからも頑張らせて頂きますね! (2019年6月29日 18時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年5月21日 14時