No.295 ページ28
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午後六時半頃。
待ち合わせ場所である総合公園の入口で、和葉と氏橋はド緊張MAXでかかしのように固まっている。
「そ、そうちゃんあたし変じゃないよね？」
「ああ変じゃない、俺はキモくないか？」
「ちょっとキモイ…」
「あ！？」
そこに「お待たせ〜」と聞き覚えのある声がする。どこから声がするのかとキョロキョロ当たりを見渡せば、中村が白い車の中から優雅に手を振っている。
「しーくん！」と和葉が駆け寄ろうとしたが、思ったより靴擦れが進んでいる。立ち止まったまま無理やり笑えば、助手席にいた中村が出てきて、後部座席のドアを開いた。
和葉たちが不思議に思っていると、綺麗なつま先がすっと伸びてきた。凛とした声で「ご苦労さま！」と中村の腕を頼りながら、一人の可憐な少女が現れる。
「み…み＿＿＿＿」
「みやの……」と氏橋が魂の抜けた声を絞り出した。
「ギャー！」と和葉は大興奮だ。なんせ美江は美しい淡い紫陽花の浴衣で、あの長い髪をお団子に纏めて簪でとめていた。
美江が降りたのを確認して車が発車する。運転手は中村組のタクシー代わりである山田だったようだ。
「お待たせ、和葉綺麗ね！」
「い、いや美江ちゃんの方が綺麗だよっ、いいないいな、凄い綺麗！」
キラキラと顔を輝かせる子供のような和葉に、美江は照れたように「ありがと」と呟く。
その背後で中村が、「ほら、なんか言いなよ」と氏橋を肘でつつくが、生憎氏橋は顎が外れそうなほどあんぐり口を開けたままガチガチに固まってしまっている。
「そうちゃん！……颯太！」と耳元で呼ぶ中村。氏橋はビクンとして耳を塞いだ。
「な、なんだよ！」
「なんだよじゃないよ、褒めないでどうするのさ」
女子二人が話に夢中になってる間に、中村は氏橋の肩をガシッと掴んで睨みをきかせる。
「あのね、この際だから言っておくけど君はグズでビビりで根性無しだ。俺はうんと昔から颯太のそういうところが大嫌い。いい加減宮野ちゃんの望むことくらい分かってやんなきゃ駄目でしょうが。あの子は君のデートの誘いを受けたんだぞ、こんなチャンス二度とないと思いな」
「は、はい……」と腰を抜かす氏橋。
「言っとくけど」と氏橋から離れて、中村が冷たく口を開いた。
「今夜だけで宮野ちゃんをゾッコンにさせる自信が、俺にはあるよ」
「精々俺に取られないように頑張りな〜」とヒラヒラ手を振る中村。氏橋の喉からヒュッと凍てつく空気が飛び出した。
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そちゃ(プロフ) - おい氏橋！ついにやりやがったな...と、友達目線で読んでました。今回のお話はキャラのらしさ全開で読んでて楽しかったです。アインくん不穏でしたが彼ならきっと乗り越えられると願ってます....続き楽しみにしてます。 (2023年3月22日 21時) (
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2023年3月15日 23時
